「存在を知ってもらうことが大切。」勇気を出してカミングアウトすれば、確実に何かは変わるのだということに、改めて気づかされました。
こんにちは!台北で現地採用として働いております、LGBTの“G”にあたるMae(@qianheshu)です。
【台湾の会社で全社員に同性が好きであることをカミングアウトしたら、意外な反応が返ってきた。】という記事でも書かせていただいたのですが、半年ほど前に職場で僕のセクシャリティについてカミングアウトをしたことがありました。
その後、特に大きな変化が起こることもなく(起こらなくていいのですが 笑)、平穏なオフィスライフを送っていたのですが、つい先日、とてもビックリな出来事が。
それは現在、台湾社会で巻き起こっている、LGBTについての「ある話題」に関係すること。
その瞬間は、同僚たちの想いに感謝したのと同時に、その話題に対する彼らの関心度、そして行動力の高さに、感動せずにはいられませんでした。
「もしあの時、僕がカミングアウトをしていなかったら、結果は違っていたのだろうか?」
今振り返りながら考えてみると、改めて「存在を知ってもらうことの大切さ」を見つめなおす、良い機会となったように思います。
今日は、僕の職場で起こった「LGBTに関するあるエピソード」について、みなさんとシェアしてみたいと思います。
同性婚合法化は決まったはずなのに「国民投票」?! 今、台湾で何が起こっているのか。
今回のお話に入る前にまず、今台湾で熾烈な討論が繰り広げられている、
LGBTを巡る「ある話題」についてご紹介しておきたいと思います。
台湾について詳しい方はすでにご存知かもしれませんが、
台湾は来年2019年5月末を目処に
「同性カップルにも婚姻を認める」ことが決定されています。
今、焦点となっているのは「どのような形式で認めるか」ということ。
現状では、異性カップルのみに限定されている婚姻に関する法律をそのまま、
性別を問わずあらゆる人に適用できるようにするのか。
あるいは、現状の婚姻とは別枠で、
同性カップルのみに適用される新たな婚姻の法律を作るのか。
はたまた、それ以外の他の方式を採るのか。
この婚姻の形式を巡って、「国民投票を行おう!」という動きが出てきました。
「同性カップルの婚姻は、自分たち(異性カップル)の婚姻とは区別してほしい
(=婚姻の平等を支持しない)」と考える派、
「性別にとらわれず、あらゆる人が現状の婚姻と同じ制度を利用できるようにすべき
(=婚姻の平等を支持する)」と考える派。
それぞれが、国民投票の実現に向けて、署名活動を展開する事態となりました。
関連記事→【同性婚合法化決定から1年の台湾で今起こっていること。思わぬ方向へと動き出した「婚姻平權(婚姻平等の権利)」の行方は?】
今回のお話は、そんな社会全体を挙げての署名合戦の最中に起こった出来事。
舞台となったのは、僕がいつも仕事をしている、職場のオフィスでした。
「僕たちにも、あなたたちと同じように、自由に自分の人生を決める権利をください。」
僕は、台湾で台湾人のボーイフレンドと一緒に暮らしており、
将来「同性婚」という制度を実際に利用することになるかもしれない
当事者の1人です。
当然、今回の国民投票の行方にも非常に興味を持っていて、
「あらゆる人が現状の婚姻と同じ制度を利用できるようにすべき」
という意見に大賛成しています。
できることなら、署名をしたい。
でも残念ながら、外国人である僕には、
台湾で国民投票に関する署名をする権利がありません。
それでも、直接自分の名前を書き入れることはできなくても、
何か他にできること。
それは、「1人でも多くの身近な台湾人の友人たちに、この話題を知ってもらうこと」
「僕たちの置かれている境遇について、気づいてもらうこと」しかありませんでした。
そこで、利用したのがSNS。
Facebookのタイムラインで、国民投票に関するニュース記事と共に、
僕の気持ちを書いたものを合わせてシェアしたのでした。
日本語訳:台湾の友人のみんなへ。
外国人である僕には、署名に参加する資格がないことは分かっています。
でも、やっぱりこれだけは言いたい。
僕は台湾の未来がもっと多様で、幸福なものになることを望んでいます。
これ以上、他人の権利が踏みにじられるような出来事は見たくありません。
この土地で暮らしている当事者の1人として、お願いします。
どうか(婚姻の平等を支持しない国民投票には)「No」と言ってください。
僕たちにも、あなたたちと同じように、自由に自分の人生を決める権利をください。
「昨日、署名行ってきたよ!」
そして、署名の締め切りが近づきつつあった、ある日のこと。
たまたま、お昼ごはん帰りにエレベーターホールで一緒になった同僚たちと、
オフィスへと戻っていた時。
同僚の1人から、こんな言葉をかけてもらいました。
「我昨天有去連署喔!(昨日、署名行ってきたよ!)」
婚姻の平等を支持する国民投票案に、署名をしてくれたことを教えてくれました。
彼と僕は、Facebook上でも繋がっているため
(上の投稿に「いいね!」もくれていました)、
僕が署名の件について抱いている思いを、おそらく知っていたのでしょう。
とても、うれしかったです。
彼の言葉を皮切りに、エレベーター内は国民投票に関する話題に。
すでに署名していた同僚、していない同僚どちらもいましたが、
関心を持っている同僚は多く、
署名活動の経過があまり順調でないことも把握しているようでした。
(締め切りまであと数日という時点で、約7万人分が足りていない状態でした。)
「(如果還沒的話)你也要不要寫?
(もしまだなら、君も署名すればどう?)」
まだしていなかったらしい同僚に向けて、
僕は何気なく、署名を促す言葉をエレベーターから降りる間際にかけておきました。
もちろん、無理強いするつもりはなかったですし、
「してくれるといいなあ」という、小さな望みを込めての軽い一言。
「好啊~(OK~)」と、ゆるい感じで返ってきたので、
帰り道にどこかでチャンスがあればしてくれるかなと、
このときはそうぼんやりと捉えていた程度でした。
仕事中のオフィスに、突然の「署名タイム」降臨。
そして、午後の仕事が始まってから1~2時間ほどが経った頃。
先ほど、「好啊~」とゆるい返事をしていた同僚が、
おもむろに僕の座席へとやってきました。
「何か仕事の案件のことかな?」と思いながら、パソコンから目を上げてみると、
彼の手に握られていたのは、WEB上からプリントアウトされた署名用紙。
「我現在寫喔~(今から書くよ~)」
と、報告にきてくれたのでした。
しかも、それだけではなく、彼はなんと他の同僚たちや、
会議に居合わせたクライアントにまで声をかけてくれたもよう。
仕事中のオフィスに、突然の「署名タイム」が降臨しました 笑
「你有寫婚姻平權的連署嗎~?
(婚姻の平等の署名、もう書いた~?)」
の声があちこちから聞こえてきて、
かなりの同僚・クライアントが、その場で署名をしてくれたようでした。
さっきのエレベーターでのやりとりだけでも、すごくうれしかったのですが、
まさかここまで動きが大きくなるとは…
もう目の前のパソコン作業に手がつかないくらい、心は感動で震えていました。
プライベートでも、職場でも、こんなにも温かい人たちに囲まれて過ごしている。
「本当に幸せなことだな」と、深く実感した瞬間でした。
參與連署的同事們,真的很謝謝你們的協助,我那一天其實超感動的!!!
「存在を知ってもらう」ことが、何より大切。
広告業界ということもあってか、「LGBT」の話題には、もともと関心のある彼ら。
もし僕がいなくても、あるいはカミングアウトしていなくても、
この日と同様の出来事は、変わらず起こっていたのかもしれません。
けれど、当事者である僕が同じオフィス内にいること、
「LGBTが身近に存在している」という意識を彼らが持っていること。
その事実がもし、彼らの署名への関心を高める一因となることができたのであれば、
僕にとってこれほどに勇気付けられる出来事はないと思います。
1つ1つの力は、確かに小さいのかもしれません。
それでも、その小さなレベルのことが積み重なっていけば、
そしてそれがたくさん集まれば、社会を変える大きなパワーにさえなり得ると、
僕は信じています。
「絶対にカミングアウトすべき」などという、無責任なことは言いません。
ですが、もし環境が許すのであれば、自身の心の準備が整っているのであれば、
「本当の自分」について周りに知ってもらうこと、伝えることを、
諦めないでほしいのです。
その行動によって、自分にとっても、周りの人々にとっても、
良い方向に変わることは確実にあると思います。
もちろん、これはLGBTに限らず「マイノリティ」と言われる、
あらゆるコミュニティに当てはまることなのかもしれません。
「僕たち、私たちは、確かにここに存在している。」
すごく基本的なことだけれど、それを知ってもらうことが一番大切なのだと、
改めて感じることができたエピソードとなりました。
まとめ
今日は、同性に恋する僕が職場でのカミングアウト後に体験した出来事
について、みなさんとシェアしてみました。
ちなみに。
「国民投票を求める署名」は、最終的にどうなったのかといいますと…
婚姻の平等支持を求める国民投票案の署名は、
最終1週間での驚異の巻き返しにより100万人分近い署名を集めることに成功!
11月24日(土)の選挙と合わせて、
実際に有権者へ支持・不支持が問われることとなりそうです。
関連報道→【37天內奇蹟式達標!「平權公投」百萬連署送中選會,年底大選搭公投至少9案|The News Lens 關鍵評論】
どのような結果になるのかはまだ分かりませんが、
ここまで漕ぎ着けることができたのも、この国に生きる当事者一人一人が、
勇気を出して行動してきたからこそだと、思わずにはいられません。
良い結果が出ることを、
台湾が幸せな未来を迎えられることを、僕は信じています。
台灣加油!
おまけ:本日の台灣男子
『本日の台灣男子』は、僕が台湾の街で出会った台湾男子たちを、
思わず胸キュンしてしまったエピソードと共に、イラストで綴るインスタアカウントです。
時にかっこよく、時にかわいく、時にゆるゆるな台湾男子の魅力は、
ID:todaystaiwaneseboy に詰め込んでいますので、
ご覧いただけるとうれしいです!
▼こちらの記事もよくお読みいただいています!▼
→台湾はいつから同性婚ができるの?台北在住LGBT(ゲイ)の僕がよく尋ねられる疑問にお答えします。
→ゲイである僕が声を大にして伝えたい4つのこと。「自分の周りにいない」はただの思い込みです。
→LGBTの日常や悩みがよく分かる5冊の本。ゲイである僕の目線からおすすめの作品を選んでみました。
→「恋人と長続きするコツは?」と聞かれて彼氏と5年付き合っている僕が考えた3つのこと。
コメント