台湾の会社で全社員に同性が好きであることをカミングアウトしたら、意外な反応が返ってきた。

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高雄同志大遊行(高雄レインボーパレード)2017で手を引いて歩くゲイカップル

台湾生活6年目にして人生最大規模のカミングアウト。僕が会社でセクシャリティを明かした理由は、こんなきっかけでした。

こんにちは!台北で台湾人ボーイフレンドと暮らしております、LGBTの“G”にあたるMae(@qianheshu)です。

僕が「自分は同性に惹かれる」ことを意識するようになったのは、今から10年ほど前の大学生の頃だったのですが、これまでも幾度となく自身のセクシャリティについて、相手に伝える機会がありました。

どの瞬間も色々な意味で印象に残っているのですが、先日また新しく僕のカミングアウト・ヒストリーとして、おそらく一生忘れないであろう出来事が発生。

そして、今回起こったことは、シチュエーションも規模もこれまでとは全く異なったもの。

周囲からの反応はもちろんですが、僕自身の中でも「自らのセクシャリティとの向き合い方」に関して変化が起こっていることに気づき、意外なほど興味深い発見となりました。

今日は、僕が先日体験したカミングアウトについて、みなさんとシェアしてみたいと思います。

 

目次

きっかけは、会社の送別会。

メガネとパソコンのキーボード

本題に入る前にまず、僕の会社での状況について触れておきたいと思います。

 

台湾で暮らすようになってからこれまで、

2つの会社(デザイン事務所と広告会社)で勤めた経験があるのですが、

前会社(デザイン事務所)では社長さんを含め、

ほぼ全てのスタッフが僕のセクシャリティについて知っていました。

 

これは、僕がその会社の面接の際に「男性が好きです」と、

あらかじめ伝えていたことが発端。

 

なぜかは分かりませんが(オーラがでていた?)、

社長さんよりセクシャリティについて尋ねられたので、

嘘をついて後々面倒になってもイヤだなと思い、率直に答えておきました 笑

 

そういう過程もあって、実際に勤務が始まるころには

すべてのスタッフが知っていた、という次第です。

 

僕は、この社長さんのやり方に問題があるとは考えておらず、

むしろ最初から心得てくれていたおかげで、

仕事に専念できたと思っているので、とても感謝しています。

 

そして、転職後の現在の会社(広告会社)ですが、

こちらは入社前に、現在の直属上司にブログを発見された(!)経緯があり、

その関係でその人にはカミングアウト済みでした。

 

ですが、社長さんや他のスタッフには特に何も伝えておらず、

改めてLGBTに関して話をしたこともないので、

彼らの考え方や立ち位置は全く分からない状態。

 

とは言え、デザイン事務所に勤めていた頃から、

現在の会社とはお付き合い深かったので、

当時から一緒に仕事をしているスタッフの数人くらいには

「どこかから伝わっているかもしれないな~」と、

うっすら思い描いている程度でした。

 

台北の本格派台湾料理店「參和院」の店内

ここまでが前段階ですが、今回のカミングアウトのきっかけとなったのが、

この広告会社での送別会。

 

僕は、大勢でテーブルを囲む場がとても苦手で、

あまり進んで顔を出す方ではなかったのですが、今回は特別。

 

転職の際にも非常にお世話になった、

現会社の社長さんが日本へ帰国することとなったため、

その送別会ということで参加することにしました。

 

会場は、台北のおしゃれタウンとして知られる東區(ドンチュ)にある、

小洒落たイタリアンレストラン。

 

当然、全社スタッフ30名ほどが勢ぞろい。

 

普段から一緒に仕事をしている同僚たちとは言え、

これだけの大人数で食事をするのは久しぶりだったので、少し緊張していました。

 

カミングアウトの瞬間は、突然に。

 

周辺に座っている同僚たちと軽くおしゃべりをしながら、

生ハムのオードブルやトリュフ入りパスタなど、

豪勢なイタリアンを堪能していると、ふと耳に入ってきた不穏な言葉。

 

「このあとゲームがあるから、心の準備しておいてねっ!」

 

社長さんの労をねぎらいながら、

一人ずつお礼の言葉を発表していくくらいの感じで、

なごやかに進んでくれたらいいなあ、と思っていたのですが、甘かった。

 

送別会でもクリエイティブ魂を発揮して、

派手に送り出してあげるのは当たり前、といったところでしょうか。

 

正直、この時点で「これはもしかすると、もしかするかもしれないな」という予感を、

感じずにはいられませんでした。

 

そして、場が盛り上がってきたところでやって来た、ゲームの時間。

 

「この箱の中には、全スタッフの名前を書いたボールが入っています。

 引いたボールに書かれた名前の人は、このカードの束から一枚、

  “お題”を選んでください。

 そして、もう一度箱の中からボールを引いて、

 選ばれた人と2人で”お題”をやってもらいます!」

 

要するに、日本でもお馴染みの、

言われたことは絶対にこなさなくてはいけない、あのゲーム。

 

しかも、全員当たるまで終わらないシステムになっているので、

必ず何かしらがまわってくるのは確定です。

(もう、「その」予感しかしない…)

 

どんな”お題”が書かれていたかは、ここでは省略しますが、

概ねみなさんもご想像の内容で間違いないかと。

 

見ている方は確かにおもしろくはありますが、

いつ自分の番が来るかと、ドキドキしながらゲームの様子を眺めていました。

 

「Mae~!!!輪到你囉~!(出番が来たよ~!)」

 

出番が回って来たのは、4~5ターン目くらいの頃。

 

ハッとして、思わずマカロニが喉につっかえかけましたが、

水で何とか流し込み、そろそろとニヤける司会の同僚の方へ向かいます。

 

“お題”は、先に呼ばれた同僚がすでにカードを引いて確定していたので、

僕は彼女と共に”お題”をこなす役。

 

こともあろうに、「真心話(本音を話す)」のカードでした。

 

とは言え、彼女の質問次第では、まだ穏やかに終わる可能性も。

 

「どうか、仕事の本音くらいにしておいてくれたまえ」と心の中で念じつつ、

次の言葉を待ちます。

 

「你…」

 

きっ、きた…!

 

「你,到底有多少個女朋友啊?」

 

…マジで、きた。

 

「彼女は何人いるのか?」と、聞いておられる!

 

…まぁ、やっぱりそうなりますよねぇ(崩潰)

 

実は、その同僚は、前回会社の食事会に参加したときも、

僕の「女朋友」について知りたがっていた人。

 

その時は、何となく気が引けて、うやむやにその場を逃れたのですが…

 

…もうよい、そんなに知りたいのであれば、本音を献上して差し上げよう!

 

僕の口元に注がれる、全社員の注目。

 

これも、ある意味では縁。

 

これからのためにも、覚悟は決めた!

 

「我…」

 

いつもはうるさいくらいに賑やかなくせに、仕事中よりも静まり返る一同。

 

「我,有一個…男朋友!!!」

 

ボーイフレンドがいることを、ついに同僚上司社長の前で告げた瞬間でした。

 

同僚や社長から返ってきた、意外な反応。

韓国・ソウルのゲイタウン「鐘路3街(チョンノサムガ)」のバー

本音を告白して少し冷静になってきたところに、未だ続く会場の沈黙。

ほんの1、2秒ほどの時間のはずが、30秒くらいの重みを持った時間に思えました。

 

「これは、やっちゃったかな…」と不安になりはじめた、その時。

 

「哇~!!!」「~!!!」「ぱちぱちぱち…」と、

一気に目の覚めるような音の波が押し寄せて来ました。

 

張り詰めていた糸がぷっつりと切れて、肩の力を抜くようにホッと一息。

 

質問をした同僚も、司会の同僚も、

同じテーブルに座っていた同僚も、上司も社長さんも。

 

興奮したような笑顔が、たくさん目に飛び込んできました。

 

僕は、この本音を言うことで、みんな驚くのではないか、と思っていました。

 

ところが、実際に蓋を開けてみると「お~!!!」の響きの後ろに感じたのは、

驚きというよりも「(ついに言ったね!)」のニュアンス。

 

しかも、数人どころか、全スタッフの60〜70%くらいがそんな感じの反応だったので、

こちらが驚いたくらいです 笑

 

どのようなルートを辿ってなのかまでは定かではありませんが、

このときようやく「ああ、やっぱりみんな意外と知ってたのね」と、

改めて確認することができたのです。

 

自分の番を終えてテーブルに戻ろうとすると、

「你好棒喔~(すごくよかったよ~)」と声をかけてくれたり、

ハイタッチを求めてくる同僚たち。

 

まだ会社に入ってまもない同僚たちは、さすがに少し驚いた様子でしたが、

それでも好意的に受け止めてくれたようで、

ここでもホッと胸をなで下ろしました。

 

席に着くかつかないかのところで、声をかけてくれたのは、

この送別会の主役である社長さん。

 

「いや~、今のはかっこよかった!!!」

 

と、ワイングラスが割れそうになるくらいめいっぱいの力で、

乾杯を交わしてもらいました。

 

高雄同志大遊行(高雄レインボーパレード)2017で掲げられるレインボーフラッグ

今回のカミングアウトは、

「自分のセクシャリティを相手に伝える」というよりも、

結果的には「相手がどう感じているのか再確認する」意味合いの強いものに。

 

カミングアウトにはそういう役割もあるのだなあ、

と改めて考えさせられた出来事となりました。

 

これまでで一番、平常心でいられたカミングアウト。

高雄同志大遊行(高雄レインボーパレード)2017で手を引いて歩くゲイカップル

もう一つ、この飲み会での体験を振り返ってみて、気づいたことがあります。

 

今回の出来事は、ブログやSNS、メールといった

文字を使っての間接的なカタチではなく、

自ら声を発して目の前の相手に伝える直接的なカミングアウト。

 

これまでも何度か、同様のカミングアウトを経てきましたが、

その中でもダントツで心の負担が少なかったのが、今回のカミングアウトでした。

 

目の前の相手が30人という、

僕の人生史上一番大きな規模だったにも関わらず、

うろたえることなく「平常心」を保ったまま、告げることができました。

 

もちろん、前もって何となくでも心の準備ができていたというのも、

無関係ではないと思います。

 

ですが、それと同時に、

自分の中でも「男性であって、男性が好き」というセクシャリティを、

本当の意味で「自然なこと」として受け入れることができてきたおかげなのかな、

とも感じています。

 

同性が好きであることを意識しはじめて、およそ10年。

 

今になってようやく、

「ありのままの自分に嘘をつかない」という簡単なはずのことを、

少しだけできるようになってきたのかもしれません。

 

まとめ

2018年台湾最初のLGBTプライド「台南彩虹遊行(台南レインボーパレード)」でレインボーTシャツを着た参加者

今日は、台湾の会社で全社員に

同性が好きであることをカミングアウトしたら、意外な反応が返ってきた

お話をみなさんとシェアしてみました。

 

ちなみに、送別会を終えた後、

「実際に会社で仕事をする上で、何か変化はあったのか」

という点を付け加えておきますと、

今のところ特に変わったことはありません。

 

カミングアウトの前も後も、

相変わらず黙々とバナーや新聞広告をデザインする日々が続いております。

 

もちろん、同僚たちの対応が変わったということもなく、いたって平常運転。

 

唯一変わったことといえば、

会社でも堂々とSNSを開けるようになったこと、くらいでしょうか。

 

マッスルイケメンや、レインボーフラッグの写真が突如出現しても、

堂々としていられます 笑

(遊んでいるのではく、SNS用の広告を製作するために開くだけ、ですからね!)

 

こんなカミングアウトの例もありましたよ、というご報告でした。

役に立つかどうかは分かりませんが、

どこかで何かの参考にしていただければうれしいです。

 

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