同性婚実現のタイムリミットまで、あと11日。台湾北東部の街・苗栗で初めて行われたLGBTプライドで伝えられたメッセージとは?
こんにちは!2019年台湾の第2弾となるLGBTプライドを歩いてまいりましたMae(@qianheshu)です。
今回参加して来たのは、台湾北西部の街・苗栗で行われたLGBTプライド「苗栗愛轉來平權遊行」。
今年2019年が初めての開催ということで、どのようなイベントになるのか、ワクワクしながら向かいました。
また、初開催ながら、台湾での同性婚実現前最後のLGBTプライドという、とても重要なタイミング。
法制化のタイムリミットが約2週間後に迫っている現状と、それについての当事者たちの想いがひしひしと感じられたイベントとなりました。
今日は「苗栗愛轉來平權遊行」当日の様子について、同性婚の審議を巡る台湾の現地事情も交えながらご紹介したいと思います。
「故郷へ、返ってこなくては。」苗栗初開催のLGBTプライドで伝えたいメッセージは?
2019年が初開催となる
「苗栗愛轉來平權遊行」の会場となったのは、
台鐵(台湾鉄道)竹南駅近くにある「竹南運動公園」の一角。
駅から会場までの道のりには、
イベント名がプリントされた小さなレインボーフラッグが、
あちこちに掲げられていました。
パレード出発の30分ほど前に到着してみると、
記念撮影に励む人や、ブース巡りを楽しむ人たちで、
すでに活気に溢れる会場。
出発時間が近づくにつれて、
ブースエリアはますますの賑わいをみせていました。
こちらは、苗栗愛轉來平權遊行の
公式ブースで配られていたフライヤー。
フライヤーにデザインされた
6色の枠がスタンプラリーになっていて、
6つのNGO団体のブースを巡ってスタンプを集めると、
ミニプレゼントがもらえる仕組みになっています。
ステージでは、アーティストの方も登場してのミニライブや、
プレゼント争奪クイズ大会などもスタート。
司会者の方も、アーティストの方もノリノリで、
会場中にいっぱいの元気を振りまかれています。
今回のパレードの名前となっている「愛轉來」は、
苗栗に数多く暮らしている
客家人の言葉・客家話から採ったもの。
ちょうど、翌日に母の日を迎えるタイミングということで、
「故郷だからこそ伝えたいこと」に重点が置かれています。
愛轉來,取自客語「愛轉來(oi zonˋ loiˇ)」
──「要回來」之意,在閩南語中,
同樣的語意則唸作「愛轉來(ài tńg-lâi)」;
我們將在 5 月 11 日母親節的週末,
發起苗栗第一屆平權遊行,
並持續在地方上推動平權觀念的普及,
走出同溫層、開啟對話可能,
以實際的行動走入巷弄、走進人群,
傳遞多元價值;
也希望全臺各地青年都能共襄盛舉,
一起支持苗栗邁向多元與包容的未來。
「愛轉來」とは、
客家語の「愛轉來(oi zonˋ loiˇ)」に由来する言葉で、
「要回來(返ってこなくては)」という意味です。
閩南語(台湾語)では、
同様の意味の言葉を「愛轉來(ài tńg-lâi)」と読みます。
私たちは、5月11日、母の日を迎える週末に、
苗栗にて初めてとなるLGBTプライドを行う決心をしました。
都市部以外でも、権利平等の概念を広げるために。
コンフォートゾーンを抜け出し、対話の可能性を広げるために。
実際に街へと歩みを進め、人波の中へと進んでいくことで、
多様性の持つ価値を伝えていきたいと考えています。
苗栗が多様性と包容力に飛んだ未来へと歩んでいけるよう、
台湾各地に暮らすみなさん、ぜひご支持をお願いいたします。
訳:Kazuki Mae
実は苗栗は、昨年行われた
同性婚と性別平等教育に関する国民投票にて、
支持票が特に低かった都市の一つ。
だからこそ、
まもなく同性婚が実現するこのタイミングで、
この土地のすごく身近なところにも、
当事者が存在していることを知ってもらいたい。
そのような想いのもと、
今回のパレードが歩かれることになります。
参加者およそ2,000人!苗栗の街がにじいろに染まる瞬間。
パレードスタートの時間が近づき、
会場前の道路へと続々と集合する参加者のみなさん。
みるみるうちに数百メートルにわたる隊列ができ、
苗栗初のLGBTプライドがいよいよ出発です!
台湾はすでに梅雨入りし、
台北ではここ数日、雨のお天気が続いていました。
「苗栗では大丈夫だろうか?」
と心配していたのですが、全くの杞憂に。
真っ青な空が広がる快晴で、
早くも真夏そのものの陽気です。
元気いっぱいの日差しを受けて、
レインボーカラーも眩く輝きます。
今回のパレード路線は、
4.5kmの道のりを90分ほどで歩くルート。
買い物客が多く集まる賑やかな界隈の他に、
緑の稲穂が揺れる水田が並ぶ
地元市民の生活エリアも盛り込まれていました。
これまでに参加して他都市のLGBTプライドでは、
市街中心部を歩くことが多かったので、
これはなかなか新鮮な体験です。
「この街に暮らす人々に、生の声を伝えたい。」
そんな願いの現れが、
このルートには現れているように感じました。
カップルで手を繋いで当事者として、
レインボーフラッグを身に纏ってアライとして、
パレード隊列を整えながらボランティアとして。
それぞれに想いを抱えて歩くみなさんの姿は、
うだるような暑さをも跳ね返すような、
エネルギーに満ち溢れています。
ルートの途中には、水分補給のできるスタンドも。
確かに、少し気を抜けば
熱射病にもなりかねない気温ということで、
参加者をいたわる主催者側の
細やかな心づかいが感じられます。
パレードカーに立つのは、
苗栗でLGBTの権利を支持して活動する議員の方や、
地元の学校の教壇に立つ先生方など。
苗栗という場所で当事者の置かれている環境や、
地方政治の場での出来事などを交えながら、
集まった参加者へエールの言葉が投げかけられます。
主催団体の発表によると、
この日の参加者はおよそ2,000人。
初開催にして、
これだけの大規模なパレードとなったのは、
同性婚実現目前というタイミングはもちろんのこと、
台湾社会における注目の高まりも反映された
結果ではないかと思います。
そして、同性婚の審議が進む台湾の現状を表す
メッセージもたくさん見られた、今回のパレード。
法制化のタイムリミットが11日後に迫っていますが、
審議の場においては依然として、
楽観視できない状況が続いています。
「決戰」の日はまもなく。最終審議が間近に迫る台湾の現状は?
パレード後のステージにて、
たびたび聞かれたキーワードは「決戰」。
物々しくも聞こえますが、パレードが終わればまさに、
法制化の審議は山場を迎えることになります。
現在、審議の場には、
同性婚に関連する3つの法案が提出されています。
現状で最も理想的とされ、
同性カップルに「婚姻」の権利を認める
行政院提案の「司法院釋字第748號解釋施行法」。
それに加えて、同性婚反対派より
「公投第12案施行法」と
「司法院釋字第748號解釋暨公投第12案施行法」
という2案が提案され、3つの法案が混在している状態です。
新たに提出された
「司法院釋字第748號解釋暨公投第12案施行法」は、
前に提出された2案の折衷版と謳われています。
が、その実情は
「婚姻」関係を認めるものでないのはもちろん、
「3親等以内の親族に、2人の関係の無効を訴える権利」
を盛り込むなど、当事者の自由を脅かす内容となっており、
大きな議論を巻き起こしています。
そして、これら3つの法案全ての主張を交えて、
法案の具体的な内容に関する討論が行われるのが5月14日(火)、
最終決議が5月17日(金)。
最も理想的とされる行政院提案の法案を
そのまま通すことができるのか、
あるいは同性婚反対派の意見が聞き入れられ、
変更が加えられることになるのか。
同性カップルに、真の「婚姻」の権利は認められるのか。
まさに審議の場における「決戰」が、始まろうとしています。
実際に子育てをされている同性カップルの方々も、
ステージ上にて現在の心境を語られていました。
子供と血縁関係にない片方のパートナーが、
「親」であると認められない現在。
もし新しい法律でも依然として認められなければ、
血縁関係にあるパートナーにもしものことが起こった時、
子供にもしものことが起こった時、
もう一方のパートナーには、何の権利も認められません。
子供を「両親」として育てることのできる、
行政院版の法案を何としても死守してほしいと、
想いを伝えられていました。
同性婚実現に向けて、審議の場にて支持を訴え続けている
立法委員・尤美女さんもステージに登場。
「審議が行われる5月14日、17日の「決戰」の日には、
ぜひ立法院前に集まって、みなさんの声をダイレクトに
立法委員全員に届けてほしい」と、訴えかけておられました。
このパレードが終わったら、台湾はいよいよ、
歴史的なターニングポイントを迎えることになります。
しかし、その結果がどのようなものになるのか、
未だ誰にも予測ができない状況に変わりはありません。
今、ただできることは、「声を上げること」。
それが、現段階での一番理想的なカタチで、
新しい社会を迎えられるかどうかの鍵となる。
大きな期待と、
それと同じくらい大きな不安が入り混じった中で、
「決戰」の日は迎えられることとなりそうです。
まとめ
今日は、台湾北西部の街・苗栗で行われた
LGBTプライド「苗栗愛轉來平權遊行」をご紹介しました。
初開催ながら2,000人という大きなパレードとなった、
苗栗のLGBTプライド。
パレードは自体は、
ほのぼのとした雰囲気ではありましたが、それと同時に、
決して楽観視することのできない現状に対する、
緊張感も含んだイベントとなったように思います。
次回のLGBTプライドは、
2週間後の5月25日(土)、台湾北東部の街・宜蘭で行われる
「宜蘭驕傲大遊行」です。
この宜蘭のパレードが行われるのは、
同性婚法制化のタイムリミットを迎えた翌日。
イベント当日にはすでに、
審議を終え、全ての答えが出揃っていることになります。
台北からもバスで1時間強で到着できますので、
この重要なタイミングでの現地の空気を体感されてみたい方はぜひ、
宜蘭・羅東へ足を運ばれてみてはいかがでしょうか。
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