まもなく訪れる新しい社会。変化を続ける台湾で、同性の恋人を持つ僕にも、ある深く考えさせられる初体験が待っていました。
こんにちは!台北で台湾人ボーイフレンドと暮らしておりますMae(@qianheshu)です。
今年2019年は、台湾の、いやアジアのLGBTコミュニティにとって、とても大きな意味を持つ1年。
来る5月24日、台湾ではいよいよ同性婚が合法化されます!
僕も早速、台湾人の彼氏さんとお付き合いしている日本男子の友人から、結婚披露宴のご招待をいただき、「ついにその時はやって来たのだな」と、ソワソワしているところです 笑
僕にも、お付き合いをして6年以上になる台湾人のボーイフレンドがいるのですが、将来的に制度を利用する可能性は充分にありえるかと。
当然、合法化には並々ならぬ期待を寄せています。
台湾社会が新たな一歩を踏み出そうとしている、そんな中で先日、この話題にも関係する、ある個人的な大イベントを体験しました。
そこで体験したことについては、嬉しくもあり、悲しくもある、複雑な心境。
「同性でも結婚ができるようになる」という変化が、キレイごとを一切抜きにして、どういうことなのか。
当事者として、改めて深く考えさせられた出来事だったように思います。
今日は、まもなく同性婚が合法化される台湾で、当事者である僕が今感じていることを記してみたいと思います。
同性婚をめぐる国民投票の結果、台湾はこれからどうなるのか?
本題に入る前にまず、
「婚姻平權(婚姻平等の権利)」をめぐる現在の台湾の状況について、
ご紹介しておきたいと思います。
すでにご存知の方や、他の記事でご覧いただいている方は、
次のチャプターまで読み飛ばしていただいても結構です。
2017年3月、台湾で同性カップルの婚姻について、
憲法上での解釈を問う憲法法廷が開かれました。
現在、日本でも複数の同性カップルが訴訟を起こす動きが起こっていますが、
まさにそれと同様のことが、台湾でも起こっていました。
その憲法解釈の結果が発表されたのが、2017年5月24日。
「同性カップルに婚姻の権利を認めない現行の法制度は憲法違反」
との判決が下されました。
また、法制度改定のタイムリミットや、
改定が間に合わない場合についても言及されており、
「2年後(2019年5月24日)までに法制度を改めること。
間に合わない場合は、現行の民法に定められた婚姻制度を
そのまま同性カップルにも適用できるものとする」
とされました。
アジアで初めて、同性婚合法化への道筋がついた瞬間でした。
関連記事→【台湾:婚姻平権を追う|「同性婚不可は違憲。」これから台湾はどう変わる?|Letibee Life】
しかしその後、この発表に不服を表明した同性婚反対派による行動で、
事態は急展開。
彼らの主張は一定の支持を集めることに成功し、
「婚姻の平等」に関する国民投票が、
昨年2018年11月24日に行われることとなりました。
投票の結果、導き出された答えは
「現行の民法による(異性カップルの)婚姻制度と、
同性カップルの婚姻制度は区別して扱われるべき」
という厳しいものに。
「あらゆる人が、同じ一つの法の下に婚姻を保障される」という、
真の平等への道は絶たれることとなりました。
関連記事→【台湾の同性婚をめぐる国民投票、反対派が多数に。これまでの経緯と今後の影響を解説。|fair】
しかし、台湾で同性婚が合法化されるという、この事実は変わりません。
国民投票の結果は、同性婚合法化自体が否定された訳ではありません。
民法による婚姻実現は否定されましたが、
新たな法律を設けるなど、別の方法による婚姻実現は可能。
国民投票から3ヶ月以内(2019年2月中)に、
具体的な法案が提出される予定となっており、
現在はそれがどのような内容となるのかに、注視されている段階です。
ただし、この新しい法律の制定は、
タイムリミットである今年5月24日には間に合わないとの見方も。
もし間に合わない場合は、憲法解釈の結果に定められていた通り、
新法の制定まで、現行の民法の婚姻制度が
暫定的に同性カップルにも適用される見込みです。
人生初体験。ボーイフレンドの実家訪問へ。
そのような情勢を踏まえての、今回の本題。
2018年の年の瀬に、僕にとっては人生初の大イベントがありました。
それは、「恋人の実家を訪ねる」というもの。
彼のご両親には、すでに何度かお会いしたことがあったのですが、
泊まりがけでの訪問となると、また気持ちが違うもの。
出発前の数日は、冗談でなく食事が喉を通らなくなるくらい、
とても緊張しておりました。
訪問を決めたのは、社会の進歩に伴って
「将来的にボーイフレンドと婚姻関係になるかもしれない」という考えも、
確かにありました。
ですが、今回のところは、まだそこまでの改まった意図はなく、
純粋にご両親のこと、彼の生まれ育った場所を
もっと知れる機会になればいいな、という思いからでした。
滞在中は、お父さんの投資している魚の養殖場を拝見したり、
台所でお母さんのお料理のお供をしたり、みんなで買い出しに行ったり、
と和やかな雰囲気。
緊張こそ完全にほぐれることはありませんでしたが、
「来てよかったな」と心から思える、意義深い滞在となりました。
ただ、彼の両親にしても、
息子が同性の恋人を家に連れてくるというのは、初めての体験。
当然、その先にある未来についても意識されていたようで、
ご両親が同性婚について感じていることも、口にされる場面がありました。
当事者だけじゃない。不安と葛藤は「当事者の家族」にもある。
彼のご両親は、心配を抱えておられました。
「仮に婚姻関係になることがあったとしら、
息子たちの関係を、付き合いのある近隣にはどう告げればいいのか。」
「婚姻関係になったことを、あえて外には知らせない、
という方法もあるのではないか。」
「法律上の関係の有無以上に、家庭の中で尊重し合うことができれば、
それで充分なのではないか。」
同性婚に関して快く思っていないようにも聞こえますが、
実はそう単純ではないこの告白。
彼らの心の中に渦巻いていたのは、
僕がかつて自分のセクシュアリティについて悩み苦しんでいた時と、全く同じ感情。
それは、「当事者としての不安と葛藤」そのものでした。
結婚というのは、ある意味、最大級のカミングアウトです。
一つ屋根の下、共に生活を送る。
種々の手続きをする際は、配偶者として申し出る。
子供を迎え入れれば、両親として外を歩く。
そんな生活を、
これまで異性カップルが当たり前のように営んできた、そんなライフスタイルを、
台湾に生きるLGBT当事者たちは、30年以上もの年月をかけて求め続けてきました。
彼らが一丸となって、心から望み、勇気を出して行動したからこそ、
ここまで漕ぎ着けることができました。
僕は外国人ではありますが、台湾人の同性の恋人を持つ1人として、
そんな生活が今や永遠に手に入ることのない夢物語ではないのだと思うと、
彼らと同じように、心が震えるくらいにうれしいです。
しかし2人の結婚は同時に、
これまで当事者である自分たちが立ち向かってきた社会の厳しい圧力を、
自分たち以外の大切な人にも、もたらすことになるかもしれない。
同性が好きであることを、社会の大多数とは違うということを、
周囲に知られる恐怖。
これまでの平穏だった生活を、一挙に失ってしまうかもしれない恐怖。
僕もかつては、時に自分の生存意義すら見失わせてしまうほどの、
その果てしない恐怖を、常に抱えて生きてきました。
それと同じものを、彼のご両親も感じ始めていたのではないかと想像します。
だからこそ、彼らの告白には、
傷つくことも、ショックを受けることも全くありませんでした。
その気持ちは、僕にも痛いほどによく分かるのです。
同性婚はゴールじゃない。同性婚は「新たなスタート」。
台湾ではまもなく、同性婚が合法化されます。
僕自身もそう遠くない将来に、
ボーイフレンドとその制度を利用する可能性は大いにあります。
率直に言って、場所と場合によっては、
自分たちの関係をありのままにオープンにできないことがあるかもしれないのは、
悔しくて悔しくてたまりません。
「結婚しています」という、
異性カップルにとっては当たり前の一言を口にできないことが、
これからあるのかもしれません。
2人は「親友」と偽らなくてはいけないことも、
まだまだ起こり得るのかもしれません。
状況によっては「結婚式を開く」ことすら、
難しい場合もあるかもしれません。
しかし少なくとも、たとえそうだとしても。
大切な人たちが、自分たちの関係に理解を示してくれている。
その事実こそが、2人にとってこの上なく幸せなことだと、そう思います。
僕も、彼の実家への訪問を終えて、
ご両親からは「いつでも帰っておいで」「2人が幸せに暮らせますように」と、
お言葉をいただくことができました。
同性婚ができるようになったら、それがゴール。
そうではなくて、そこからが「新たなスタート」にすぎないのだと、
身に染みて実感しました。
課題はまだまだ山積みで、
それは婚姻という制度ができると同時に一掃されるものではない。
当事者である僕だって、
起こりうるかもしれないそれらのことにどう対処すればいいのか、
まだ分からないことはたくさんあります。
彼のご両親だって、今まさに不安や葛藤の最中にあります。
日本で暮らしている僕の両親だって、そうだと思います。
今すぐにできないこと、できなくてもどかしく感じることは、
これからもたくさんあると思います。
でもだからこそ、「今できることから」始めるしかないのです。
当事者の1人として、僕には何ができるのか。
自分たちの幸せと、大切な人たちの幸せを、どうすれば守れるのか。
新しい未来は、もうすぐそこです。
時間がかかるかもしれませんし、
意外にすんなり進んだりもするのかもしれませんが、
2人で話し合いながら、1つずつ答えを出していきたいと思います。
まとめ
今日は、まもなく同性婚が合法化される台湾で、
当事者である僕が感じていることについてシェアしてみました。
最後に。
僕はこの長文をここまで読み進めていただいた、
読者のみなさまに心から感謝します。
しかしながら、中にはもしかすると
「そんなに悩み苦しむくらいなら、いっそ同性婚なんて合法化しなくていいのでは?」
と思われた方も、おられるかもしれません。
もし、そう感じられた方がおられましたら。
悩み苦しんでしまうのは「同性婚が合法化されるから」ではありません。
「あなたと同じ考えを持つ方が、この世界にはまだたくさん存在しているから」
なのです。
なぜ、あなたはそのように感じたのか、
その根底にあるものは何なのか、
もう一度よくよく見つめ直していただきたいのです。
平等で友好的で、多様性に富んだ社会を、
制度だけで作り出すのは難しいです。
あらゆる人の基本的人権を保障する制度があって、
ひとりひとりに正しい理解があって。
それでようやく、
真の意味での、平等で友好的で、多様性に富んだ社会と言えるのだと、
変化を続けている台湾で、当事者である僕も毎日学んでいるところです。
▼こちらの記事もよくお読みいただいています!▼
→「高雄同志大遊行(高雄プライド)」2018レポート。国民投票翌日に2万人が歩いた、励ましと涙でいっぱいのパレード。
→ゲイである僕が声を大にして伝えたい4つのこと。「自分の周りにいない」はただの思い込みです。
→LGBTの日常や悩みがよく分かる5冊の本。ゲイである僕の目線からおすすめの作品を選んでみました。
→「ストレートの私にできることは?」と問われて考えた、同性に恋する僕がお願いしたい4つのこと。
コメント
コメント一覧 (8件)
はじめまして。
突然のコメントで失礼いたします。
いつも台湾情報を楽しく読ませていただいているのですが、
「台湾で当事者」というブログ主様の言葉に違和感があります。
私の違和感の元は、私自身が「台湾で当事者」という言葉の
意味の中に国や国籍としてのイメージを強く抱くということや
(ブログ主様が当事者と言うのはという国や国籍としての意味合いより
人同士、ゲイ同志という共通項を通して発言されているように感じます)、
私自身は日本人ですから日本人として、
台湾での同成婚の合法化に向けた動きが
基本的に台湾での台湾人による台湾人のためのもの
だと捉えている考えているからだとも思うのですが
(なぜなら、それが台湾の法律のことだから、台湾の国民投票だから、
台湾在住外国人には台湾の同成婚の合法化への決定権が無い、からです)、、、
だからこそ、台湾で同性婚が合法化ということ、
同性の台湾人同士が婚姻できるようになる
ということは容易に理解できるのですが、
台湾で台湾人と日本人との同性婚について
台湾での同性婚が合法化ということの中には
同性同士の国際結婚ということも含まれているのか?、
台湾では違う国籍の同性が婚姻をしていることになったとしても
日本国内だとその二人は法的にどういう関係になるのか?、
ブログ主様が当事者として真剣に同成婚のことを
考えておられること、私にもとても伝わってきますが、
台湾に帰化して台湾人として台湾人と婚姻をするという
選択肢のようなことを考えたりすることはないのでしょうか?、
当事者としてただゲイ目線で同成婚を語ることだけではなく、
国、国籍、日本人、台湾人、国際結婚、そういった
ストレートのカップルにも起きている問題と同じような、
今後、同成婚の合法化を果たした後にゲイカップルにも
起こり得る「一般社会的な観点も含めた情報」が、
このブログの内容の中に足りていないことが
私の違和感にも繋がるのではないかなと私は思いました。
私がコメントを残したこと、コメント内容などに
悪意や批判を込めたつもりは全くありません。
私個人の感想というかブログ内容を読んで
単純にパッと頭に浮かんだ素朴な疑問です。
ただ私は文章を書くことが苦手なので
まともに推敲もできていない長文のせいで
要らぬ誤解を招いてしまわないようにと願います。
今後も記事の更新を楽しみにしています。
コメントありがとうございます。
憲法法廷の見解では、
「同性カップルに”結婚”の権利を認めない現行の法律は違憲」とされています。
現行の法律で異性カップルに認められている”結婚”に伴う全ての権利は、
同性婚でも同じく認められなければいけない、ということです。
現在、異性カップルの結婚において、台湾人と台湾人はもちろんのこと、
台湾人と外国人の場合も結婚はできますから、当然国際結婚も含まれます。
結婚するために帰化しなくてはいけない、という決まりはありません。
実際に、台湾では同性の国際カップルが、
結婚できないゆえに起こった悲劇的な事件が大きなニュースとなったこともあり、
同性カップルの国際結婚に対しての注目度も高いです。
【関連記事】→ https://www.storm.mg/article/345252
(台湾人パートナーのいたフランス籍の当事者が、
パートナーの亡き後、彼の生きた証を何一つ自分の手元の遺すことができず、
自ら人生を終わらせることを選んだ、という事件です。)
また、記事の冒頭でも書かせていただきましたが、
僕の日本人の友人からも「合法化と同時に台湾人パートナーと結婚する」
とお知らせをもらっており、
これから同性カップルの国際結婚のケースは、
台湾各地で見られるようになりそうです。
さらに、仮に台湾で同性婚をした場合、
日本では法的にどのような関係になるのかについては、
僕も同性婚の合法化が台湾で話題に上り始めた時に、
日本の市役所に問い合わせたことがあります。
その際のお返事については、以下の記事でも触れていますので、
ご覧いただければと思います。
【関連記事】→https://kazukimae.com/gay-couples-child
ですので、この記事はそのような台湾の状況を踏まえ、
「台湾人のパートナーと将来的に結婚するかもしれない当事者の1人」として、
「台湾で婚姻制度を利用することになるかもしれない当事者の1人」として、
感じていること、私生活で起こった出来事について書かせていただきました。
ご参考いただければ幸いです。
你好!
当事者ではなく、まえちゃんのサイトをちょくちょく見ているものですが(宿を実際参考にさせていただき、泊まってきました。ありがとうございます)、一言言わせてください。
まえちゃん達がとても大変な思いをしているのはとても伝わりますが、私は特に何とも思いません。隣にまえちゃんカップルが住んでいても、家族であっても、全く気にもしないです。
ゲイだからどうのこうの言うのは、余計なお節介、セクハラだと思います。
そもそも誰と誰が付き合うとかを噂にしたりネタにするのは下品な行為だと思うからです。東スポや女性セブンのしょーもないネタを楽しむようなものです。
日本のお笑いもゲイをネタにする事があるけど、くだらないと思います。
こんな余計なお節介でいちいち傷つかないでください!
私ももしそういう人がいたら意見するので!(法整備とかの問題はそれとは別だと思いますが、そもそもゲイカップルと、子供が産めない・産まないカップルが結婚するのと何が違うのかも理解できないです)
だから、せっかくの一生、無駄に傷つかないで欲しいと祈ってます!
頑張って!
文章下手ですみません。
すごく勇気づけられるお言葉をありがとうございます!
そうですね、人生は一度きりですから、自分の望むように行動することが一番大切ですよね。
ついついネガティブな方に考えてしまうこともありますが、
これからも2人で楽しく過ごしていけるよう、前向きに歩いていきたいと思います。
初めまして 質問ですが
台湾は同性婚認められましたが
国際同性婚も出来るんでしょうか?
彼氏は台湾人で台湾に住んでます。
俺は日本に住んでますが
俺が台湾に行って彼と同性婚が出来て
台湾に住めるんでしょうか?
日本で何かの手続きがいるんでしょうか?
こんにちは!
台湾では今年5月24日に同性婚が実現しますが、
実はまだ現在も、法案審議中の段階で、
実際にどこまで権利が保証されるのかは、未だはっきりしないところがあります。
しかし、残念ながら、現在提案されている法案では、
(日本を含めた)同性婚制度のない国のパートナーとの結婚までは保証されておらず、
台日カップルの結婚実現はまだ先になるのではないかと思います。
返事ありがとうございます
同性婚制度がない日本が
同性婚できる国での
国際結婚は不可能かも知れませんよね
普通の男女の国際結婚は両方の国の
手続きが必要とされてるので。
日本が同性婚認められないと無理かも
ありがとうございます。
ただ、国際同性カップルの置かれているそのような状況も話題に上っており、
5月24日には間に合わないかもしれませんが、
今後の審議次第では、出身国に同性婚制度があるないに関わらず、
結婚が認められる可能性はあると思います。
なので、まだ希望を捨てず、これからの動きに注目していきましょう!