同性に恋する僕はなぜ、「教わる場」に対する恐怖を拭い去れずにいるのだろう。


台湾のLGBT音楽イベント『為愛返家音樂會』で配布されたマルバツカード

講習の場で起こったある出来事。強くなったと思っていたのに、また怖気づいてしまった僕は、どうすればこの「恐怖」を拭い去ることができるのでしょうか?

こんにちは!台湾・台北にて、ボーイフレンドと暮らして10年目のMae(@qianheshu)です。

ここ数ヶ月、仕事上の必要のため、ある講習を受けています。

その講習の内容自体からは、新しい知識やスキルを学ぶことができて、すごくタメになっている、と感じてはいます。

しかし、講師の先生が講習中に発した「ある言葉」。

それを耳にして以来、心のどこかにずっと、もやもやとしたものを同時に感じています。

実は僕、講習やレッスン、学校と言った、あらゆる「教わる場」に対して、恐怖心や不安を持っています。

それは、これまでに「教わる場」にて経験してきたことと、大きく関係しているのですが、その恐怖心をピンポイントで刺激されるような出来事が、この講習では起こってしまったのです。

今日は、その時の体験について、お話しさせていただきたいと思います。

 


「我的性向正常啦!(俺のセクシュアリティは正常だ!)」

メガネとパソコンのキーボード

現在受けているこの講習は、

週2回。

 

始まった当初は、

参加している1人1人の進度や

理解度まで気を配ってくださる、

 

良い講師さんだな、

と、思っていました。

 

しかし、講師さん・生徒さんとも、

講習にだいぶ馴染んできた、

ある日のこと。

 

講師さんは少しずつ

プライベートな話を、

講習の間で織り交ぜるように

なってきたのですが、

 

ふと、恋愛に関するお話が

始まりました。

 

その中で、

講師さんの口から放たれた一言。

 

「我的性向正常啦!我是喜歡女生的。

(俺のセクシュアリティは正常!

俺は女性が好きだから。)」

 

この言葉が耳に届いた瞬間、

僕は長らく忘れていた

「教わる場」での恐怖を

感じ始めました。

 

セクシュアリティを

「正常・不正常」で

捉えることについては、

 

僕は全く同意できませんし、

明らかに間違っていると思います。

 

ただ、講師さんの心の内にある

セクシュアリティに対する捉え方は、

ひとまず1000歩譲って、

かたわらに置くとしても、です。

 

この心の内にある捉え方を

発言して公表することによって、

「不正常」のレッテルを貼られた

生徒さんが生まれてしまったこと、

 

そして、講師さんご本人が

その行為の重大さに

全く気づいていないのが、

何よりもショックでした。

 

何かを学ぼうと集まった

大勢の生徒さんの中には、

自分の考え方や感じ方とは、

違う人が必ずいる。(いない方がおかしい。)

 

講師としての経歴が

豊富なはずのこの人は、

 

これまでも同じような発言を、

数多くの生徒さんの前で

してきたのかと思うと、

やりきれない気持ちになりました。

「你有沒有結婚?(結婚してる?)」

台日同性カップルの友人から届いた結婚式招待状「喜帖」

また別のある日、

講習の開始時間より、

少し前のこと。

 

他の生徒さんがまだ集まっておらず、

たまたま、僕と講師さん

2人だけになった時間がありました。

 

世間話が好きな講師さんが、

また何を言い出すかと

気を張っていたら、

 

今度はこんな一言が

飛んできました。

 

「你有沒有結婚?

(結婚してる?)」

 

台湾で生活していると、

数分前に会ったばかりの

全く親しくない人からでさえも、

聞かれることがある、この質問。

 

「我有沒有結婚管你◯事啊!」

と、心の中で叫びつつ、

 

とにかくこの話題を

早く切り上げたい一心で、

「沒有」とだけ、答えておきました。

 

「苗栗愛轉來平權遊行」2020のパレードを手を繋いで歩くカップル

ただ、この質問を受けて、

ふと感じたこと。

 

現在の台湾では、

同性カップルも結婚ができます。

 

同性の恋人がいる場合でも、

「できない」ではなく、

 

「している」「していない」と、

素直に答えられるようになったのは、

とても大きな変化だよなあ、

とも、同時に感じました。

 

厳密には、

パートナーの片方が外国人である

国際同性カップルの場合、

 

台湾で結婚するには

まだ制限があります。

(台日同性カップルの場合は、
まだ結婚ができません…)

 

ただ、その事情まで

正確に把握している方は、

非常に少ないことも知っているので、

 

その事情を知らずに

「結婚」について聞かれるのは、

正直、仕方がないようにも思えます。

 

とは言え、

嫌いな質問であることには

変わりなく、

 

嫌い度150%だったのが、

120%になった、

くらいの感覚でしょうか。

「你有沒有女朋友?(彼女はいるの?)」

高雄のおすすめ観光スポット「西子灣」忠烈祠前の展望台

問題なのは、その後。

 

結婚していないと、

答えたので、

 

「那,有沒有女朋友啊?

(じゃあ、彼女はいるの?)」

 

と、質問が飛んできました。

 

実は、

「我的性向正常啦!」発言を

耳にした日、

 

講習のアレンジメントを行っている

担当の方(=僕のセクシュアリティのことも知っている)

に、この発言に対して

ショックを感じた旨をお話しし、

 

匿名という形で、

講師さんへ間接的に

僕の感じていたことを

伝えてもらっていました。

 

それにも関わらず、

飛んできた「女朋友」発言。

 

やっぱりこの講師さんには、

ショックの理由が

全く理解されていなかったのだな、

と、この時にガックリしました…

 

なぜ、「女」朋友と、

あなたに決めつけられねば

ならないのか?

 

目の前にいる生徒が、

自分とは違う可能性については

考えないのか?

 

「我是有「男」朋友的!」

の一言が喉まで出かかりましたが、

 

心に引っかかっていた

講師さんの最初のあの発言が、

グッとその想いを押し留めました。

 

台南彩虹遊行(台南レインボープライド)2020の会場ブースにはためくレインボーフラッグ

セクシュアリティを

正常・不正常と表現する相手。

 

しかも、まもなく講習が終われば、

確実に会わなくなる相手。

 

そんな相手にまで、

カミングアウトをするエネルギーを、

僕には費やすことが

できませんでした。

 

それと同時に、もし

この場でカミングアウトをしたら

どんな反応が返ってくるのか、

 

全く予想ができず、

恐怖を感じました。

 

そもそも、

アレンジメントの担当者の方から

伝えてもらったことが、

本当に理解されていたなら、

 

こんな話題について

切り出さないはず。

 

どうしても聞きたかったとしても、

「女朋友」ではなく、

もっと他の聞き方があったはず。

 

とてつもなく

もやもやとした想いとともに、

僕が吐き出したのは、

 

「沒有…」の一言でした。

 

すかさず飛んでくる、

 

「怎麼會啊?(何でいないの?)」

 

「你應該很快交到啦!

(きっとすぐ見つかるでしょ!)」

 

などの、

講師さんの言葉が、重い。

 

しかし、

他の生徒さんがまだいなかったのは、

ある意味では幸いだったかも。

 

もし、周囲に

僕のセクシュアリティのことを知らない

生徒さんたちまでいる中で、

 

このやりとりを

行わなければならなかったら、

だいぶキツかったかもしれません…

僕が「教わる場」に対する恐怖を拭い去れない理由。

台湾のLGBT音楽イベント『為愛返家音樂會』で配布されたマルバツカード

ここに書いたのと

同じような出来事は、

 

日常生活の中でも、

これまでに何度となく

体験してきました。

 

ただ、「教わる場」が特別なのは、

周りには、同じく学ぶために集まった

背景も考え方もそれぞれに異なる

生徒さんたちがいること。

 

先生・生徒を問わず、

一定の期間にわたって、

何度も顔を合わせ続けなければ

いけないこと。

 

先生に何かを尋ねられたら、

何らかの答えを

返さなくてはいけないこと。

 

そして、その先生が、

必ずしも多様性を

尊重・理解してくれている

とは、限らないこと。

 

毎日あるいは定期的に

通わなければならず、

 

そう簡単には「逃げられない」

という拘束感も、

僕を不安にさせるのかもしれません。

(その意味では、上下関係があり、
毎日のように顔を合わせる同僚がいる職場も、
似たような環境にあるかもしれません。)

 

例えば、

僕が語学学校に通っていた頃の

出来事ですが、

 

教科書で、

恋愛や結婚がテーマになっていた日、

 

僕は当時、学校では

カミングアウトを

していなかったので、

 

先生から

恋愛体験について尋ねられたり

(もちろん、「女」朋友について)

 

クラスメイトと結婚について

討論したりするのが、

つらくてたまりませんでした…

 

台湾・桃園のLGBTプライド「桃園彩虹野餐日」2020でレインボーフラッグを掲げて歩く参加者

「カミングアウトすればいいじゃん!」

と、思われる方も

おられるかも知れませんが、

それは本当に、本当に難しい。

 

カミングアウトすることによって、

クラスメイトとの関係に

どのような変化が生じるのか?

 

先生は果たして、

どんな反応をするのか?

 

「みんなと違うから」

と、いじめられないか?

 

クラスの外にも話が広がって、

至るところから変な目で

見られるようなことにならないか?

 

家庭内でカミングアウトしていない場合、

自分の意図しないカタチで

親や兄弟に伝わってしまわないか?

 

家族全体にまで

カミングアウトの影響が

及んでしまわないか…

 

とめどない不安が押し寄せてきて、

それゆえにいつも、

心のどこかに「恐怖」を感じてきました。

 

台北のLGBTスポットを巡る観光バス「Color Taipei 彩虹觀光巴士」の第1スポット・台北市政府前のレインボー歩道で記念撮影する作者

僕は、ブログでも職場でも、

自分のセクシュアリティを

オープンにしていますが、

 

だからと言って、

どんな人や場所であっても

無条件にカミングアウトをする

わけではありません。

 

この人(環境)は信頼できる、

もっと信頼関係を築きたい、

自分のような存在も

身近にあることを知ってもらいたい。

 

自分でそう確信を持てた時だけ、

カミングアウトをします。

 

今回の講習の場(講師さん)は、

残念ながら、そうではなかった。

 

この「教わる場」に対する恐怖を、

完全に拭い去るには、

僕自身もどうすればいいのか、

正直、分からないままでいます。

まとめ

高雄同志遊行(高雄プライド)2020でキリスト教グループが掲げるプラカード

今日は、同性に恋する僕はなぜ、

「教わる場」に対する恐怖を

拭い去れずにいるのだろう


と、考えさせられたお話でした。

 

今回のことに関しては、

僕がショックを受けた旨を

聞き入れてくれ、

 

講師さんにちゃんと伝えてくださった

アレンジメントの担当の方には、

すごく感謝しています。

 

ただ、それでも、

講師さんには最後まで

理解をしてもらえなかったのは、

 

ただひたすら残念だと、

思わずにはいられません。

 

まだ、誰にも

カミングアウトしていない場合、

 

自分の気持ちすら伝えることができず、

1人で抱え込まなくてはいけない

ことだってあり得ます。

 

義務教育の場で、塾で、大学で、

語学学校で、レッスンで、講習で。

 

「恐怖」を少しでも減らすためには、

一体どうすればいいと、

みなさんは思いますか?

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コメント

  1. Lapak より:

    講師お疲れさまでした。大変でしたね〜。
    無意識の差別的発言にうんざりさせられることは、どこの国に住んでいても多かれ少なかれあると思いますが、僕の場合は関係性がそこまで深くない人の発言であれば「また言うてるな」と聞き流すことにしています。そんな発言にダメージをくらってる時間さえ勿体ない!と思うので。
    この先何年経とうが、同性婚が全世界で認められようが、「異性愛が『正常』だ」と考える人はいなくならないでしょうね。そういう人の心ない発言に付き合っているヒマはこっちにはないので、精神衛生のためにも「聞き流す」術も身につけねばと思っています。もちろん、関係性の度合いによっては上手に聞き流せず、ドンッとダメージをくらうこともありますけどね。笑

    1. kazukimae より:

      聞き流す力、大切ですよね。
       
      僕も普段の生活の中で、
      たまたま接触を持っただけ、
      今後会うかどうかも不明な相手なら
      聞き流したり、距離をおいたりもするのですが、
       
      数ヶ月間は必ず、
      定期的に顔を合わせなければいけない相手
      というのが、対応の難しい点でした。
      毎度聞き流すのも、ストレスがたまりますし…
       
      きっと今後も同じような状況に出くわすことは
      あると思うので、
      できるだけ自分のメンタルにダメージをくらわない方法を
      編み出しておかなければ、と感じました 笑

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