選挙後に思い出す「同溫層」という台湾の言葉。現実とのギャップに振り回されないために。

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台湾でよく見聞きする「同溫層」という言葉の意味は?現実とのギャップは、なぜ生まれる?選挙の度に影響を実感する現象について、個人的想いを綴ってみます。

こんにちは!台湾から日本の選挙に投票しました、台北在住のMae(@qianheshu)です。

先日、参議院議員選挙の投開票が行われましたね。

インターネットのニュースを見ながら、僕も台湾から、投票率や開票結果に注目していました。

前回の衆議院議員選挙の時もそうだったのですが、選挙の結果を見ていて、いつも頭に浮かんでくるのが、台湾で「同溫層」と言われる言葉。

今回も、自分の身のまわりで感じていた空気感とは全く違う結果を目の当たりにし、そのギャップに再び驚かされているところです。

なぜ、現実との大きなギャップに、心が振り回されてしまうのだろうか。

今日は、「同溫層」という台湾の言葉に触れつつ、選挙が終わった今、個人的に感じていることを書き記してみたいと思います。

目次

台湾でよく使われるようになった言葉。「同溫層」の意味は?

台北101展望台から望む台北市内の景色

4〜5年前くらいから

だったでしょうか。

 

台湾で、

「同溫層」という言葉を、

よく見聞きするように

なったのは。

 

直訳すれば、

文字通り「同じ温度の層」。

 

化学の教科書にでも

出てきそうな言葉ですが、

 

生活の中で

よく使われている意味は、

もっと身近な現象を指したもの。

 

「同溫層」で言う温度とは、

物事に対する

心理的な温度感のこと。

 

台湾では主に、

政治や社会問題などを

討論する場面で

使われることが多く、

 

支持する方向性や

思想が近いひとたち


(=同じ温度感を持つひとたち)

 

のグループ層を指して、

そう呼ばれます。

 

日本語では、

「エコーチェンバー現象」

と、言うらしいです。

(もっと身近な言い回しもありそうですが、
思いつきませんでした…)

 

そして、選挙を経るたび、

僕の頭に浮かんでくるのが、

 

「同溫層很厚」

 

という表現。

 

「層が厚い」、

つまり、周囲を見渡しても

同じ温度感のひとたちばかりで、

 

その外側が

見えにくくなっている

状態を指します。

開票後に否応なく意識させられる「同溫層」の厚さ。

日本から届いた選挙の投票用紙

選挙が近づくと、

僕のSNSのタイムラインには、

こんな言葉が並びます。

 

「ゼッタイ投票に行く!」

「〇〇に1票を!」

「××を当選させてはダメだ!」

 

選挙に対して、

とても熱量を持ったひとたちが多く、

真剣に意見が交わされています。

 

これだけ見れば、

 

「日本人は政治に興味がない

なんてゼッタイに嘘!」だし、

 

「今度こそ投票率は上がる!」のは、

間違いないとすら思えるほど。

 

SNSにあふれている

この勢いを信じれば、

政権交代ですら

起こり得たかもしれません。

 

東京・新宿駅前の広場

しかし、現実は、

全くそうではなかった。

 

どれだけSNSで

盛り上がっていても、

 

投票率は依然として

50%前後で大きな変化はなく、

 

開票結果も、

SNSの勢いから想像されるのとは、

真逆。

 

あの討論は、

果たして夢か幻だったのか、

まるで別の国の出来事かのごとく、

 

結果は見事に違い、

毎回のように驚かされたり、

ショックを受けたりするのです。

 

台中同志遊行(台中LGBTプライド)2018会場の国民投票に関するボード

実は、

これと同じような体験を、

台湾でもしています。

 

それは2018年、

同性婚に関する国民投票が

行われた時のこと。

 

SNSのみならず、

職場の同僚や友人も含めて

意見を見聞きしていると、

 

民法改正への支持

(=同性カップルの結婚を、
異性カップルの結婚と同じ法律で実現し、
平等に扱うべき)

 

が、必ず上回ると、

信じてやみませんでした。

 

しかし、蓋を開けてみると、

 

「まさか、支持しないひとが

これほどまでに多いとは…」

 

と、愕然とさせられるほどの

不支持票の多さ。

 

社会の多数派から、

数百万という具体的な数字でもって、

 

自分たちの存在や関係性を

否定されたようで、

とてもショックだったのを

今でも忘れることができません。

過酷な現実とのギャップを埋める作業は、しんどくても時に必要なのかも。

台北・九份の生活エリアのレンガ造りの小道

僕は、自分から望んで

「同溫層」に

飛び込もうと思って、

 

日々を送ってきたわけでは

ありません。

 

本当に無意識のうちに、

ふと周りを見渡してみれば、

そう言う状態に

なっていたのです。

 

特に、インターネットやSNSは、

自分の興味関心に沿って

検索をかけたり、

フォローをしたりするので、

 

より「同溫層」が

築かれやすいのかもしれません。

 

日本の選挙に関して言えば、

海外で暮らしている僕は、

 

インターネットやSNSを

通してでしか、

情報や温度感を知り得ないので、

 

余計にその傾向が

強いかもしれません。

 

これって、

「けっこう怖い現象だな。」

と、思いました。

 

スマホの時計

「同溫層」は言うなれば、

社会の一部の集まりでしかない

「小さな世界」。

 

その小さな世界で知ったことが、

そのまま自分の思想や

行動につながって、

 

自分という人間を

カタチ作っていく。

 

それ自体は、

全く悪いことではない

と、思いますが、

 

「小さな世界の流れ

=社会全体の流れ」

と、思い込んで、

 

現実とのギャップに

気づかないままでいることが、

なにより怖い。

 

だからこそ、

選挙や国民投票などによって、

ギャップが露呈してしまった際の

ショックや絶望感が、

 

余計に大きくなりがちな

気がします。

 

高雄同志大遊行(高雄プライド)2018パレードで掲げられたプラカード9

もちろん、

同じ意見や感覚を持つひとたちと

つながりを持てることは、

とてもありがたいです。

 

同性に恋するという、

社会ではマイノリティに当たる僕は

かつて、

 

「自分ひとりだけがこうなのか?」

と、悶々と悩んでいた時期が

ありました。

 

それゆえ後に、同じ感覚を持つ

たくさんのひとたちと知り合い、

つながりが生まれた現状が、

 

すごくうれしいですし、

心の支えを感じてもいます。

 

おかげで、

生活を送る上で

心地よいと思える環境も、

築き上げてくることができました。

 

しかし、

とてもしんどいことなのかも

しれないけれど、

 

時々は、

その心地よい場所を抜けてみて、

 

あえて過酷な現実を

直視する機会を持つことも、

疎かにしては

いけないのだろうな、と。

 

何よりいざと言う時に、

心のダメージを軽減する

という意味でも、

 

ギャップを埋めるための作業を

意識的に行う必要が

あるのかもしれないな、

 

と、改めて感じている

今日このごろです。

まとめ

在外選挙制度のパンフレットに書かれた投票の流れ

今日は、

「同溫層」という

台湾の言葉を思い出し、

個人的に感じていること


を、書いてみました。

 

単純に、僕が楽観的すぎだったり、

インターネットやSNSに

どっぷり浸かりすぎていたゆえ、

なのかもしれませんが、

 

選挙結果が出ると、

毎回少なからず

ショックを受けてしまうその心情を、

今回は素直に書き出してみました。

 

最後に。

 

記事中で「ギャップを埋める」と

書いていますが、

これは決して妥協する

という意味ではありません。

 

自分の生活と密接に関わる、

ゼッタイに譲れないことを

捻じ曲げる必要は全くないですし、

 

発言することを

止める必要もないと思います。

 

僕も、SNSやブログを通して、

自分の考えや意見を

シェアすることを

止めるつもりはありませんし、

 

これからも続けて行く

心づもりです。

 

「ギャップを埋める」とは、

どちらかと言うと、

「もしもの時に向けた心の準備」

と、言った方が近いかもしれません。

 

実現を願っていることと、

全く違う結果になる可能性が、

どのくらいありそうなのか

を、考えてみる。

 

もしも、本当に

全く違う結果が出るとしたら、

そこからどうしたいのか、

想いを巡らせてみる。

 

そうして、少なくとも

心の準備だけはしておいて、

まずは深手を負わないこと。

 

それが、

これからも動き続けていくためには、

一番大切なことですから。

 

みなさんは、

自分の周りに築かれた

「同溫層」の存在に、

気づいた経験がありますか?

▼ こちらの記事も、よくお読みいただいています! ▼

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