台湾と日本の年金制度は、どんなところが違う?「勞保(勞工保險)」と「勞退(勞工退休金)」で保障されることって?将来のお金に関する、気になるポイントを調べてみました。
こんにちは!台湾で現地採用の会社員として働いておりますMae(@qianheshu)です。
【台湾の永住権「外僑永久居留證」の申請方法。申請条件・必要書類・手順をまとめました。】の記事でもお話ししていますが、僕は1年半ほど前に、台湾で永住権を取得しました。
それに合わせて、在籍している会社でも、就労ビザから永住権への切り替え(就労ビザ申請の必要がなくなった)を行ったのですが、その際に人事の方から「勞退」に関するお話がありました。
「勞退」とは、台湾の公的な退職金制度のこと。
それに加えてもう一つ、「勞保」という一文字違いの制度もあり、この2つが日本で言うところの「年金」に似た制度となっています。
これらの制度については、ぼんやりと知っているくらいだったのですが、最近日本の年金に関する本を読んだこともあってか、「台湾の制度は、具体的にどうなっているのか?」と、好奇心が湧いてきてそわそわ。
せっかくの機会なので、詳しく調べてみることにしました。
※以下の内容は、台湾で雇用されている「会社員」の場合で、お話を進めていきます。
日本の年金に似た制度が台湾には2種類!「勞保」と「勞退」とは?
![台北・永安市場「四號公園」で体操レッスン中のおじさんおばさんたち](https://kazukimae.com/wp-content/uploads/2016/07/DSC00824-min.jpg)
冒頭でも触れた通り、
台湾には、
「勞保」と「勞退」という
2つの制度があります。
それぞれ正式名称は、
「勞工保險」と「勞工退休金」。
勞保の費用は、
個人と雇用主でそれぞれ負担し、
僕の例で言えば、
毎月の給与のおよそ2%ほどが
天引きされています。
勞保の方は、
働き始めた頃から天引きされていたので、
前々からその存在を知っていましたが、
「勞退」について知ったのは、
永住権を取得してからのこと。
勞動部によると、
民國108年(2019年)5月より、
永久居留證(永住権)を取得して働く外国人も、
勞退への加入が義務付けられるように
なったそうです。
政府為了建構外籍人士在台灣服務的友善環境,
放寬取得永久居留許可且適用勞基法的外籍人士,
自108年5月17日(勞退條例修正生效日)起
為勞退新制強制提繳對象,
雇主應自108年5月17日起為其提繳勞工退休金,
進一步保障在台永久居留的
外籍工作者的退休生活。出典:勞動部勞工保險局
政府は、外国籍人材が
台湾で仕事をするための
友好的な環境を整えるために、
永久居留許可を取得し、
勞基法の適用範囲となっている外国籍人材も、
民國108年(2019年)5月17日より、
新しい勞退制度の強制加入対象とすることを
決定しました。
雇用主は民國108年5月17日より、
勞工退休金の支払いをし、
台湾に暮らす永住居留権を持つ
外国籍人材の退職後の生活を、
さらに保障する必要があります。訳:Mae
上にも書かれているように、
「勞退」のための毎月の支払いは、
給与からの天引きではなく、
雇用主側が、
給与の6%にあたる額を負担し納める
システムとなっています。
(つまり、手取りの給与に影響はありません。)
また、将来受け取れる金額を
増やしたい場合には、
自分の給与から自主的に上乗せして
支払うこともできるそうです。
日本の年金制度に似ている「勞保」。老後の年金以外にも様々な保障が。
![高雄のおすすめ観光スポット「衛武營」都會公園](https://kazukimae.com/wp-content/uploads/2019/06/DSC05329-min-1024x768.jpg)
この2つの制度のうち、
より日本の年金制度の近いのは
「勞保」の方。
現在の制度で、
僕と同年代の人であれば、
加入した年数に応じた金額を、
65歳から毎月年金として
受け取ることができます。
(一括受け取りや、受け取り年齢を早めたり
遅らせたりすることも可能なようです。)
しかし、台湾も日本と同じく、
高齢化が進行中のため、
今後何らかの変更が加えられる可能性は
ありそうですね。
そして、勞保には
退職後に受け取れる年金だけではなく、
他にも様々な保障が。
カラダに何らかの障がいを抱えてしまい、
仕事ができなくなってしまった時に
支払われる「失能年金」、
不幸にも命を落としてしまった際に、
遺族に支払われる「遺屬年金」、
お子さんが生まれた時に支払われる
「生育給付」など。
支払われる金額の算出方法などは、
勞動部勞工保險局のホームページに
書かれていますので、
ご参考にしてみてください。
年金にプラスして受け取れる「勞退」。個人口座で管理される公的投資信託のようなもの?
![台北一周自転車道「觀山河濱公園」から見える內湖科學園區のビル](https://kazukimae.com/wp-content/uploads/2019/06/DSC05913-min-1024x768.jpg)
では、「勞退」は何が違うのかというと、
こちらは「勞工退休金」と言う名前の通り、
退職金に特化した制度。
勞保のように、何らかの保障が
ついている訳ではありません。
勞退は、1人1人に
個人帳戶(口座)が割り当てられており、
自分の支払った分の金額は確実に、
将来の自分へ戻ってくることになります。
60歳から受け取りを始められ、
月払いまたは一括で受け取りが可能です。
月払いの場合は、
総額を平均余命で割った金額を
毎月受け取ることになるので、
平均余命を超えると(総額を受け取ると)
支払いが終了する点が、
一生受け取りのできる
勞保の年金と異なります。
勞退新制帳戶是勞工工作期間,
雇主按月提撥薪資6%,
帳戶金額都屬勞工的錢,
勞工到60歲可以請領。
帳戶累積的總額含退休金及每年收益分配,
勞工可以選擇一次領或是按月領。
如果一次領,則與平均餘命無關,
若選按月領,
則由勞保局根據平均餘命及利率計算,
每季核發給勞工。出典:退休金算盤/勞退月領多少?
先看平均餘命|經濟日報
新しい勞退制度の口座には、
仕事期間中に雇用主より
毎月の給与の6%に当たる金額が納められ、
口座内のお金は全て、
仕事をしていた個人のものとなります。
60歳より受け取りが可能で、
退職金と毎年の収益分配を合わせた総額を
一括受け取りにするか、
月払いにするかは個人で選択ができます。
一括受け取りの場合は関係ありませんが、
月払いを選んだ場合は、
勞保局にて平均余命及び利率を計算し、
支払いが行われることとなります。訳:Mae
そして、上に出てきた
「收益分配」という言葉。
実は、ただ口座に
お金を貯めているだけではなく、
納めたお金は、国が株式や国債などで
運用するシステムに!
つまり、
口座内に貯まったお金+
運用状況に応じた収益を、
まるっと受け取れることになります。
ちなみに、
勞動部勞動基金運用局の報告を
のぞいてみると、
直近(2020年12月)は、
収益率6.94%だったそうです。
(でも、2020年はほとんどの月がマイナスだ…)
イメージとしては、
国が運用してくれる投資信託的なもの?
しかも、その資金は全て
雇用主が支払ってくれているので、
会社員の立場からすれば、
実質自己負担ゼロで
投資をしているようなものですね 笑
台湾で年金をもらうことになれば、1ヶ月どのくらいの金額になるのか?
![台湾の硬貨](https://kazukimae.com/wp-content/uploads/2021/01/DSC02954-1-1024x768.jpg)
では、もし仮に、
台湾で退職する年齢まで
会社員として働いたとして、
年金は1ヶ月にどのくらいいただけるのか?
実際に、試算してみました。
まずは、「勞保」の年金から。
計算式は、勞動部のホームページを見てみると、
(1)平均月投保薪資×年資×0.775%+3,000
(2)平均月投保薪資×年資×1.55%
のいずれか、金額の多い方
と、ありました。
「月投保薪資」は、
勞動部のこちらの表を参考に。
外国人が台湾で働く場合の給与条件
=48,000元以上を基準にすると、
月投保薪資は45,800元となります。
「年資(加入年数)」は、
仮に25年としてみると、
(1)45,800×25×0.775%+3,000=11,873元
(2)45,800×25×1.55%=17,747元
どちらか金額の多い方なので、
(2)の17,747元(=約67,440円)
となりました。
次に、「勞退」の試算。
こちらは、パーセンテージ設定が複雑なので、
經濟日報にあった自動試算機を使って、
48,000元、25年、給与はほぼ変わらない(泣)
条件で試算してみると、
5,940元(=約22,570円)
となりました。
つまり、「勞保」と「勞退」を合計して、
[勞保]17,747+[勞退]5,940
=23,687元(=約90,010円)
という結果です。
この金額がどのくらいの感覚か
と言いますと、
仮に、今現在の僕の
台北での生活に当てはめて例えれば、
つつましく生活すれば
1ヶ月ギリギリいけるかな、
という金額ですね。
(家賃支払いがなければ、充分足りそうです。)
ただ、勞退の5,940元は、
退職後約20年を超えると
支払い終了となるので、
そうなってくると厳しいなあ…
という印象を持ちました。
もちろん、
今後の高齢化度合いや、
勞退の運用実績などによって、
結果は変わってくるかと思います。
そして、退職を迎える頃には、
現在の生活スタイルからも
たくさんの変化があると思いますので、
一概には言えませんが、
ご参考までに。
まとめ
![台北・大安森林公園の休日](https://kazukimae.com/wp-content/uploads/2019/02/DSC03244-min-1024x768.jpg)
今日は、
台湾の年金制度について、
調べてみたことをまとめました。
台湾で退職を
迎えることになるのかどうかは、
僕にもまだ分かりません。
しかし、それは決して
あり得ないことではないので、
将来のことについて考える
良い機会となったように思います。
僕と同じく台湾にお住まいの方や、
将来的に台湾で暮らしたいと
ご検討中の方の、
ご参考になりましたら幸いです。
※記事中の日本円表記は、1元=3.8円で計算しています。(2021年2月20日現在)
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