同性婚実現の記念すべき1年のはずがなぜ?2019年の「花東彩虹嘉年華(台湾東部LGBTプライド)」は、台湾東部の厳しい現実と改めて向き合うパレードとなりました。
こんにちは!週末は台湾秋シーズン第1弾のLGBTプライドへ行ってきましたMae(@qianheshu)です。
今回参加したのは、台湾東部の2都市・花蓮と台東にて毎年開催されている「花東彩虹嘉年華(台湾東部LGBTプライド)」。
台東へは足を運べなかったのですが、花蓮でのパレードを歩いてまいりました。
今年は、台湾で同性婚が合法化された記念すべき1年ということで、お祝いムード一色に。
…と、言いたいところだったのですが、驚きました。
今年の花蓮のパレードはむしろ、喜んでばかりはいられない空気が、色濃く出たイベントに。
台湾東部の当事者たちが直面している厳しい現実を知り、改めて多様な社会実現の難しさについて、考えさせられました。
そこには、一体どんな事情があったのか。
今日は、9月28日(土)に開催されたLGBTプライド「花東彩虹嘉年華(台湾東部LGBTプライド)」当日の様子をご紹介したいと思います。
「私たちはみんな同じ。」2019年秋のLGBTプライドシーズンが花蓮から開幕!
2019年「花東彩虹嘉年華(台湾東部LGBTプライド)」の
会場となったのは、台鐵(台湾鉄道)花蓮駅の
おとなりにある「中山公園」。
到着した会場では、
LGBTに関する権利運動を行う団体や、
イベントオリジナルのアイテムを販売する
ブースの出展が始まっていました。
ブースとしての出展数は20ほどでしたが、
花蓮全体では50軒近くが、
LGBTフレンドリーなショップやホテルとして
加わっているとのこと。
実際に花蓮の街を歩いていると、
イベントのポスターを貼っているお店にも、
たくさん出会うことができました。
2019年「花東彩虹嘉年華(台湾東部LGBTプライド)」の
テーマは、「本是同根生 WE ARE THE ONE」。
セクシュアリティも性格も外見も、
一人一人少しずつ違っているかもしれないけれど、
もとを辿れば「みんな同じ」。
台湾東部LGBTプライドで一貫して伝えられてきた
メッセージのルーツとも言える理念を、
全面に押し出した内容となっています。
從前年的「其實我也是」,到去年的「自然而然」,
我們都在傳達一個理念,那就是我們都一樣。
「其實我也是,從同樣的根,自然而然成長出來的。」
我們都是在台灣這塊島嶼上出生、成長茁壯,
是台灣這位母親將我們孕育成勇敢的台灣人。
出典:「本是同根生」2019花東彩虹嘉年華 | flyingV
2017年の「其實我也是」、2018年の「自然而然」。
私たちが伝えたい理念は共通してたった一つ、
「私たちはみんな同じ」ということです。
「実は私も、同じ根っこから、自然と成長してきた一人。」
私たちはみんな、台湾というこの土地に生まれ、
たくましく成長してきました。
台湾という母親が、
私たちを勇敢な台湾人へと育て上げてくれたのです。
訳:Kazuki Mae
巨大レインボーフラッグに続け!にじいろが眩く輝くパレード出発。
パレード出発が近づくと、
会場には巨大レインボーフラッグが登場!
およそ20人がかりで掲げる巨大な旗に続いて、
参加者たちが一斉に街へと繰り出して行きます。
そろそろ秋が近づいて来たということもあり、
最近は雨の日が多くなっていたという花蓮。
しかし当日は、
パレードが行われるタイミングを見計らったかのように、
青空が広がる好天に恵まれました。
容赦のない太陽の光は、まるで真夏の様相。
肌を刺すような強烈な暑さにも負けず、
参加者のみなさんは沿道に向かって、
メッセージを伝えていきます。
パレードは中山公園を出発し、
目抜き通りの中山路、駅前の繁華街などを通る、
およそ1時間のルート。
それぞれ、思い思いのコスチュームや
レインボーアイテムを身につけて、
街を歩いて行きます。
ルートの中でもひときわ賑やかな
駅前繁華街に差し掛かると、
さらなる盛り上がりを見せる参加者たち。
パレードカーから流れる音楽も
一層にボリュームを上げて、
周辺に居合わせた人々も興味津々と言った様子です。
沿道では、笑顔でエールを送ってくださる方の姿にも、
出会うことができました。
パレード後のステージには、
地元の大学・東華大學から駆けつけた
音楽バンドのみなさんや、昨年も応援に駆けつけた
療癒系アーティスト・吳青原さんが登場。
この花蓮のパレードに集まった
参加者たちの勇気を労いながら、
優しい歌声を会場に届けておられました。
同性婚実現のお祝いムードではいられない。台湾東部に依然影を落とす厳しい現実。
台湾で同性婚が実現して以降、
花蓮では初めてのLGBTプライドとなった今回。
パレードもさぞかし華やかで、
昨年にも増して多くの参加者で賑わうのでは、
と期待していました。
ところが。
その予想に反して、
イベントの始まりから終わりまで、
お祝いムードが前面に打ち出されることは
ありませんでした。
司会者の方のお話に耳を傾けてみると、
昨年の「国民投票」について触れる場面が。
昨年11月、台湾では
「同性婚」と「性別平等教育」に関する国民投票が
行われたのですが、花東地區は8割以上の方が
「支持しない」票を投じたという結果に。
台湾人のボーイフレンドがいる僕も、
国民投票の結果にはとてもショックを受けたのですが、
このニュースも追い打ちとなって、
台湾東部に暮らしている当事者の方たちは、
さらに深い傷を負ったに違いありません。
この出来事がどこまで影響したのかは
推し量るばかりですが、実は今年の花蓮のパレード、
昨年よりも目に見えて参加者が減少していました。
国民投票を控えた昨年が特別に多かった、
と言うのはあるかもしれませんが、
この現象に少し驚いてしまったのは事実です。
また、来年2020年には、
台湾総統および立法委員を決める、
重要な選挙も控えている台湾。
中には「同性婚実現前の状態に戻してみせる」と
発言する候補者も存在しており、
決して楽観視できない状態が続いています。
また、ステージ上では、
つい最近起こった悲しいニュースに触れられる場面も。
軍部所属の方たちが一斉に結婚式を挙げる
「國軍集團結婚」というイベントが
近日行われる予定になっている台湾。
今年は同性婚が実現されたということで、
このイベントに初めて、
3組の同性カップルが参加すると
話題になっていました。
しかし報道の後、
参加を予定していた彼らに向けて、
周囲から厳しい圧力がかけられることに。
結果、2組のカップルが
参加を取り止める事態となってしまいました。
関連報道→【不堪輿論壓力 2對同婚新人退出國軍集團結婚|風傳媒 THE STORM MEDIA】
この出来事を一例に挙げ、
「この社会には、まだ多くの誤解や無理解がたくさん存在している」
と述べるのは、2018年パリで行われた
ゲイ・ゲームズで金メダルを獲得した
水泳選手の唐聖捷さん(写真左)。
「だからこそ、まだ声を挙げることを止めてはいけない」と、
ステージ前に集まった人々に向けて、
メッセージを伝えられていました。
台湾では、確かに同性婚が実現しました。
それは、台湾にとって非常に大きな一歩であることは
疑いようがありませんが、法律ができれば全て解決、
となるわけではありません。
誰にとっても暮らしやすい、
真に多様性を認め合う環境を作り上げるためには、
この社会に生きる一人一人の正しい理解が不可欠です。
また、国際同性カップルの婚姻や、
同性カップルの養子縁組など、
法律面で実現が叶っていない部分も、
未だ課題としてのこされたままです。
まだ決して、ゴールなどではない。
台湾東部の状況も含め、
依然として厳しい現実が影を落としている。
2019年の「花東彩虹嘉年華(台湾東部LGBTプライド)」は、
その事実に、痛いほどに気づかされた
イベントとなったように思います。
まとめ
今日は、「花東彩虹嘉年華(台湾東部LGBTプライド)」
2019の様子をご紹介しました。
昨年の国民投票の結果を受け、
厳しい現実を突きつけられた
台湾東部に暮らす当事者の方たち。
しかし、その圧力に屈することなく、
来年またこの街でパレードを行うことを、
イベントの最後には伝えられていました。
ごくごく小さな力にしかなれないかもしれませんが、
僕も来年また必ず、
花蓮へパレードを歩きに来ようと思います。
花東彩虹嘉年華(台湾東部LGBTプライド)
Web:https://lgbtqiaet2017.wixsite.com/eastertaiwanlgbtq
Facebook:https://www.facebook.com/hlLGBT/
そして、来月10月26日(土)は、
秋のLGBTプライドシーズン第2弾。
台北にて、アジア最大級のLGBTプライド
「台灣同志遊行(台湾LGBTプライド)」が開催されます!
台湾で同性婚が実現した今年のパレードには、
最大20万人が集まるとの予想も。
現地のパワーを肌で体感されてみたい方は、
ぜひ台北へお越しくださいね!
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