台湾人彼氏の父親と僕が初対面した不思議な一日のお話。

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台北101が見える夜の信義路

充分な心の準備もできぬままに、人生初の一大事を迎えてしまいました。

こんにちは!台湾へ来たばかりの頃に出会ったボーイフレンドとすでに4年越えのお付き合いとなっておりますMae(@qianheshu)です。

3ヶ月ほど前のお話になりますが、生まれて初めて「恋人の親」と顔合わせをする機会がありました。

顔合わせというと、あらかじめ申し合わせて「いざ対面!」という感じに思われるかもしれませんが、そうではなく突然、何の前触れもなく、そのような状況に直面せざるを得なくなったというのが、正しい言い方かもしれません。

ゲイとしての自分をようやく直視できるようになったのが大学も卒業間際という年齢で、それ以前はまともな恋愛など、ほとんどしたことがなかった僕。

現在の台湾人彼氏が、これまでの人生の中で一番深い関係になった相手と言って良いかと思います。

当然、お付き合いしている相手の親御さんに会うのも、その時が人生初。

その日は一気にいろいろなことが起こりすぎて胸中複雑でしたが、一生忘れられない体験になったことは間違いないと今でも思っています。

今日は、初めて台湾人彼氏の父親と出会ったちょっと不思議な一日のお話です。

 

目次

予期せぬ一本の電話。

台南の有名観光スポット「孔廟」

その日の正午、僕は台南にいました。

 

ブログ『あしたはもっと遠くへ行こう』の作者:まえはら氏主催のブロガー合宿に参加するため、

台北から台湾新幹線に乗って駆け付けたところでした。

 

どんな方たちが集まるのだろうと、楽しみ半分、緊張半分。

 

台南駅前の集合地点に向かってみると、すでにお知り合いの方もいれば、

SNSでフォローさせていただいている方、初めてお目にかかる方まで、

強者ブロガーさんたちが勢ぞろいされていました。

 

あいさつもそこそこに、全員そろったところで会場へ向かうことに。

タクシーに乗り込んで、ゲストハウスはむ家さんを目指します。

 

すでに到着していたブロガーさんとも無事合流して、総勢10名以上。

 

参加者は1人1テーマを自己紹介に代えて発表するようにと、事前にお知らせを受けていたので、

 

「自分もこのブロガーさんたちの前で発表するのか~!!!」

 

と、緊張しつつも、それ以上にみなさんがどんなお話をしてくれるのかに興味津々でした。

 

リュックサックから愛用のmacbookを取り出して、気合いを入れつつ準備にかかります。

 

パソコンも立ち上がり「いよいよ開始!」という空気になってきたところで、

時間をチェックしようとスマホを取り出す僕。

 

彼氏の携帯から、着信が入っていました。

 

それも、数分おきに5件、立て続けに。

 

これは、何やら、ただならぬ予感…

 

盛り上がり始めた空気を背中に感じつつ、会場外への扉を押し開けながら、

折り返しのボタンを押します。

 

4度の呼び出し音で、繋がった電話。

 

耳に飛び込んできたのは、「入院することになった…」という弱り果てた声でした。

 

台湾新幹線で新竹へ。

台湾で持ち歩いているスマホ「小米(シャオミ)4i」

彼の声を聞いた瞬間、頭が真っ白になりました。

 

「えっ… なんで。」

 

「昨日の夜まで元気そうに電話で話していたはずなのに、どうして…」

 

心に次々と浮かんでくる疑問。

 

突然の重大事件に放心状態のまま、会場の外で立ちつくしてしまいました。

 

原因も病状も電話だけで知るには限界があり、

不安だけがただひたすら、洪水のごとく押し寄せてきます。

 

「…とにかく、まずは彼のもとへ向かわなくては。」

 

到着早々中座することになったお詫びをまえはら氏に済ませた後、

すぐに荷物をまとめて会場を飛び出しました。

 

本当であればタクシーで新幹線の駅まで直行したかったのですが、こういう時に限ってつかまらない。

 

焦りばかりが募る中、ちょうど視界に飛び込んできたのは、バス停の立て札。

 

「時間はかかるけれど、迷っている場合ではない。」

 

運良く数分後にやってきたバスに乗り込み、駅まで向かうことにしました。

 

ちょっとでも気を緩めたら、瞬間に涙がこぼれそう。

 

でも、少なくとも、彼が自分で電話をしてきたという事実だけは、僕を励まし続けてくれました。

 

「きっと、大丈夫、だよね。」

 

新幹線のホームに到着したのは、電話を受けてから1時間後のこと。

 

「なんでこんなに時間がかかってしまったのだろう。」

 

「もっと早く到着する方法はなかったのだろうか。」

 

「こんな大切な時に、なぜそばにいてあげられないのだろう。」

 

自分の不甲斐なさを呪うような思いが、次々とこみ上げてきます。

 

窓の外を高速で流れていく緑のまばゆい車窓をぼんやりと眺めながら、

ひんやりとした空気に包まれた新幹線の座席にうずくまって、

列車は兵役中の彼が滞在している新竹へと向けて走ります。

 

彼氏の父親との初対面。

台鐵(台湾鉄道)新竹駅

やっとの思いで新竹駅に到着した頃、再び彼からの電話が。

 

「帰宅の許可がでた」という知らせでした。

 

一応の処置を受けた後、症状が予想よりも早く落ち着いてきたので、

病院で夜を明かす必要もないだろうと、お医者さんから判断されたようでした。

 

彼のもとにたどり着く前に一大事に発展してしまったらどうしようかと、

不安で押しつぶされそうだった僕は、ここに来てようやく一安心。

 

兵役先の宿舎に戻るということなので、新竹駅前で拾ったタクシーに乗って、

直接そちらへ向かうことにしました。

 

「もう、心配はいらない。」

 

ホッと胸をなでおろしたのもつかの間、先ほどの電話で聞いたもう一つの「知らせ」が、

今度は僕の心を激しく揺さぶり始めました。

 

宿舎へは15分ほどで到着。

 

彼もすでに帰り着いているということで、電話を入れて、門の前に到着したことを知らせます。

 

ドキドキしながら、鉄柵の後ろ側をじっと眺め続ける僕。

2分ほど経って、思っていたよりも元気そうな彼の輪郭が、構内から少しずつ近づいてきました。

 

「よかった… 無事でほんとうによかった。」

 

目の前で、はにかんだ笑顔すら浮かべられるようになっている彼。

 

病状を聞きたいと迫っても、答えは検査の結果次第で、現段階では不明とのこと。

不安が払拭されたわけではないものの、ひとまず無事に再会できた安堵で胸がいっぱいでした。

  

すぐにでも、思いっきり抱きしめてあげたい。

 

しかしそれは、またの機会に持ち越さざるを得ないことを、即座に察知しました。

 

その時の彼は、1人ではなかったのです。

 

隣で威厳あるオーラを放っていたその男性は、

初めてお目にかかる彼のお父さんでした。

 

父親 vs. 息子の彼氏。

台北・永安市場「青葉小火鍋」の豬肉鍋

 

「とにかく、まずはメシにしよう。」

 

僕が乗ってきたタクシーに再び3人で乗り込んで向かった先は、宿舎近くの鍋屋さん。

正面にお父さん、向かい合うようにして僕と彼氏という陣でテーブルに着きます。

 

初めましての挨拶もまだ満足にできておらず、早鐘のようになり始める僕の心臓。

心の中は、入院の知らせを聞いた瞬間にも負けず劣らずのパニック状態でした。

 

幸いだったのは、彼氏はすでに両親にはカミングアウト済みで、

付き合っている人がいること、その相手が日本人であることも、

お父さんはあらかじめ知っていたということ。

 

大体の情報は息子から聞いていたこともあってか、動揺や焦りの色は全く見られず、

威風堂々とした面持ちで鍋をつつき始めました。

 

しかし、大切な息子の連れてきた相手となれば、相応の態度に出るのは父親として当然のこと。

 

「歳は?」「仕事は?」「給料は?」など基本的なプロフィール確認に始まり、

「投資はしているのか?」「日本円の買い時はいくらと心得ているか?」まで、

台湾人のお父さんらしい、相当に突っ込んだところまで質問してきます。

 

その様子はまさに、ドラマの中で見かけるような、

娘が連れてきた彼氏を品定めする父親の姿そのものでした。

 

「まさか、何の心の準備もできていないままに、

 このような瞬間を迎えることになろうとは。」

 

内心しどろもどろになりながらも、ここでひるんだ様子を見せては負けだと思い、

ただひたすらお父さんの鋭く光る目を見つめながら、答えていきました。

 

目の前でぐつぐつと音を立てる鍋の存在など、

朝からほとんど何も食べていない空腹の感覚など、

もはや宇宙の彼方に吹き飛んでいました。

 

どこまで行っても親と子。

台湾のおばあちゃんバッグ

ピンと張り詰めた糸のような空気の中、食事を終えた3人。

 

病院から帰ってきたばかりだし、今日のところは彼氏を宿舎に送りとどけて解散になるのだろうと、

すっかり思い込んでいました。

 

ところが、ここでお父さんから意外な一言。

 

「よし、じゃあ買いものに行くぞ!!!」

 

・・・

 

はい???

 

一瞬聞き間違えたかと思いましたが、確かに「買東西」と言っておられます。

 

「いや、でもあなたの息子さんは体調もすぐれないし、

 きっと疲れているはずですよ。」

 

と、心の中で思いながら隣を眺めてみると、

「行こう!行こう!」と、俄然乗り気になっている張本人。

 

もはや「死にそうな声で電話をかけてきたアレは、幻聴であったのか???」

と思えるほどに、すっかり普段の様子に戻っています。

 

・・・

 

うん。

 

まあ、元気なら、それで、いいんですけど、ね。

 

「見て見て!このクッションふわふわだよ~!」

 

と、大型スーパーで無邪気にはしゃぐ27歳の息子。

 

キビキビとテンポよく売り場をまわるお父さんにカートを押しながらついていくのに必死な僕は、

 

「それどころちゃうわっ!!!!!」

 

と、グウの一つでもくれてやろうかと思うくらいです。

 

「おい!このダウンコート、お前に似合いそうだぞ!」と父親に呼びかけられると、

のこのこうれしそうに駆けて行く僕の彼氏。

 

「僕は一体、どうして新竹に来たのだろうか…」と、

本来の目的を忘れそうになるほどに牧歌的な光景が、

1時間近くに及ぶショッピングタイム中、延々と展開されるのでした。

 

垣間見える父親の愛。

台湾の賃貸物件のお部屋にあるダブルベッド

スーパーでの買い出しを終えて、いよいよ帰宅の時が。

 

「何はともあれ、これでようやく、慌ただしかった一日も終わり、か。」

 

フゥとため息をつきながら、タクシーを拾って彼氏の宿舎へと戻ります。

 

本日の収穫を3人がかりで部屋まで移動し、おいとまの言葉が喉元まで押し寄せていたその時。

 

商品の包装をビリビリと引き裂きながら、お父さんが次々と中身を取り出し始めました。

 

「おまえがこんなことになったのは、

 この部屋の環境が悪すぎるからだ!けしからん!!!」

 

なんと、構内にあった道具をかき集めて、部屋の修理を始めるではありませんか!

 

それもそのはず。

 

このお父さんは、地元に鍵屋さんを開いて、一代で資産を築きあげたやり手の老闆。

 

モノを修理することにかけてはプロ中のプロなので、

不備のある部屋に息子を住まわすことが我慢ならなかったのです。

 

「君!そこのペンチを取ってくれ!」

 

と、当然のことながら、修理に駆り出される僕。

 

初対面の恋人の父親と、部屋の窓修理…

 

半日前まで台南にいたという事実すら忘却の彼方に飲み込まれてしまうくらいの、

強烈な展開がこの身に降りかかっています。

 

それにしても、このお父さんの息子に対する愛は、深くて高い。

 

修理作業のあまりの白熱ぶりときたら、門限を気にしてそわそわ始める彼氏をよそに、

それよりも息子の健康が大切だと譲らないほど。

 

普段、実家に帰っている時もこんな感じなのかなあと、

親子のやり取りを見ていて何となく心がほんわかしてしまいました。

 

むろん、彼氏の頼りない一面も覗いてしまったわけではありますが 笑

 

お別れの一言。

台北101が見える夜の信義路

修理も完了し、今度こそホントにホントのお別れの時。

 

兵役中の宿舎に部外者が泊まることは不可能なので、病み上がりの心配は多少残るものの、

彼氏を部屋に置いて、僕とお父さんはそれぞれ自分の家へと帰宅します。

 

2人でタクシーに乗って、新竹駅まで向かう車中。

 

正直に言って、お父さんの話す中国語は難しくて、僕にはあまり意味が理解できません。

 

地元の芸術協会の重役も務められているとあって、

外国人にはレベルの高い慣用句や四字熟語、古典のオンパレード。

 

彼氏を介さない2人だけの今となっては、自然と口数も少なくなります。

 

「僕は、この人に良い印象を残すことができたのだろうか。」

 

別れる間際になって、一層の不安が湧き上がってきますが、

できることはすべてやったのだと信じるほかありません。

 

駅に到着して、僕は電車で、お父さんはバスで帰路につくことに。

 

背を向けようとする間際、ふいにこんな質問を投げかけてきました。

 

「同性カップルの歩む道は、決して平坦ではないぞ。

 そのことはよく分かっているのか?」

 

これまでの人生の中で、何度も僕の頭をもたげてきた質問。

 

答えは当然、とうの昔に出ていました。

 

「もちろん。」

 

そして、依然として鋭い視線を向けるお父さんへ、一番言いたかったことを伝えました。

 

「很高興認識您。(あなたにお会いできて、とてもうれしいです。)」

 

直接的には満足にコミュニケーションも取れなかった僕。

 

しかし、共に過ごした数時間を通して、これだけは疑いようもなく本心でした。

 

最後の最後で少しだけ笑って見せてくれた、お父さん。

 

「じゃあ、俺は先に行くよ。」

 

と言い残して、バス乗り場へと姿を消していきました。

 

お父さんが本当のところはどう思っているのか、僕には推測しようがありません。

 

しかし、この対面が新たな一歩をもたらしてくれた予感は、確かなものとして感じていました。

 

お父さんから投げかけられた言葉の意味を一つ一つ咀嚼しながら、

まもなく日付も変わろうかという列車の中で僕は1人、家のある台北を目指しました。

 

まとめ

高雄・旗津の人気観光スポット「星光隧道」

今日は、台湾人彼氏の父親と僕が初対面した不思議な一日のお話でした。

 

たった24時間の間にまさか、これほどまでに濃厚な展開が一気に押し寄せることになろうとは、

思ってもみませんでした。

 

その後、彼氏の体調は無事に回復。

 

又聞きでお父さんが(お世辞かもしれませんが)

「あれは、いい男だな」と言ってくれたとも聞いており、

とりあえずのところは、ひと安心しています。

 

気持ちのアップダウンが激しすぎて、とてつもなく体力を消耗しましたが、

今思うと「来るべき時が来た」ということだったのかもしれません。

 

同性カップルの社会的立場を巡る事情はまだまだ進歩の途中段階ではありますが、

こうやって日常レベルで少しずつ進んでいくことが、真の理解には不可欠なのかな、

と思っております。

 

いつかみなさんも恋人のご両親に会うことがあれば、こんなお話もあったのだなあと、

参考がてら思い出してみてください。

 

ちなみに、後の検査で発覚したことですが、

彼氏の体調不良の原因はなんと、室内の換気不足による軽度の一酸化炭素中毒。

ストーブ等炊いていなくても発生する可能性があるらしいので、

みなさんも本当にお気をつけください!

 

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コメント

コメント一覧 (4件)

  • 僕の「彼氏パパとの遭遇」もふとしたことでした。
    彼氏の(もう別の道を進んでいますが)当時音楽をしており、その発表会なるときに
    遠くの彼の実家から父親が見にくるとのことでした。
    来ることは知っていましたが、たまたま彼が準備で外している時に、僕の前に「ある小柄なおっちゃん」が現れました。お互いに面識がないので、斜め前のポジションでお酒をすすっていると彼氏が僕の所に戻って来たのはいいのですが、テーブルの前で固まり、僕と「おっちゃん」を交互に見まわしています。この時ようやく二人とも認識し「はじめまして…」という出会い。その後彼は演奏準備のため再度場を離れ、二人きりの約1時間…
    もう10年くらい前のことでよく覚えてませんが、多く言葉は交わしてないかな。
    彼氏を通じて聞いた感想は「ボーっとした人だね」でした。未だにどんな評価を受けたのか不明ですが…
    でも、この時以降、彼氏のお父さんは彼に田舎に帰ってこいと言わなくなったそうです。
    どんなタイミングで『その時』が訪れるかほんとにわかりませんね。
    自分のは小話みたいですみません。
    体調回復されてよかったですね
    ではまた

    • そうなんですね。
      そういう瞬間って、「さあ!今日はいよいよ!」と、気合いを入れて向かうものなのかと思っていましたが、
      案外みなさん突然迎えているものなのかもしれませんね。

  • 素晴らしい!maeさん、本当に素晴らしい!すっかりファンになってしまいました。こちらのブログに出会えたこと、maeさんにお会いできたことがすごく嬉しいです。僕もいろいろありますが、maeムキに(前向きに)頑張っていこうと思います。

    • いえ、僕はそんなに素晴らしい人間ではないですよ 笑
      ですが、ありがとうございます。励みになりました。

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