同性婚合法化目前の台湾でゲイカップルの未来を想像してみた。

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高雄同志大遊行(高雄レインボープライド)2016のパレードでレインボーフラッグを持って歩く親子

アジア初の同性婚実現が現実味を帯びてきた台湾。これからのゲイカップルにはこんな未来が待っているのかもしれません。

こんにちは!台湾人ボーイフレンドとのお付き合いがもうすぐ5年に突入しそうなMae(@qianheshu)です。

すでにご存知の方もおられることと思いますが、5月24日、台湾で「同性同士の婚姻を認めない現行法制度は違憲」との判決が発表されました。

最長でも2年以内に、同性カップルも婚姻制度を利用できるようになることが確実となり、アジアで初めて同性婚可能国の仲間入りを果たすことになります。

台湾で生活している当事者の一人として、これほどまでにうれしいことはありません。

これから、台湾で生きる同性カップルのライフスタイルは大きな変化の時代を迎えることになりそうですが、一体僕たちにはどんな未来が待っているのでしょうか。

同性婚が可能になった社会を、ちょっと想像してみたいと思います。

 

目次

二人で堂々と部屋を借りられる。

MacbookProとレインボーフラッグ

3か月ほど前、日本で賃貸サイトがLGBT入居者向けのサービスを開始したというニュースが

話題になりましたが、同性カップルにとって「部屋を借りる」という行為は、

なかなかに勇気のいることであったりします。

 

台湾でもその問題は存在していて、

 

「えっ?男子2人でワンルーム借りるの?」

「2人はどんな関係?」

 

など、大家さんから聞かれた時に、どうしても一歩後ずさりしてしまうのです。

 

せっかく良い部屋を見つけても、

「本当のことを言ってしまうと貸してもらえないのでは…」

という恐れが常に付きまといます。

 

僕の友人にも二人で部屋を借りているゲイカップルがいるのですが、

彼らは「いとこ」と大家さんに告げているらしいですし…

 

たとえ、結婚に相当するほど長年にわたって共同生活を送ってきたカップルだとしても、

二人の関係を素直には打ち明けにくい現状。

 

異性カップルであれば「夫婦です。」の一言で済むところを、

そう簡単には言い切ってしまうことができないのです。

 

でも、同性婚が可能になったら「結婚したカップル」として、

二人で堂々と入居することだって可能になります。

 

もちろん、大家さん側に理解があるかどうかという問題はあるかと思いますが、

少なくとも婚姻関係にあるという「お墨付き」が得られることは大きな進歩!

 

お部屋探しへの苦悩が軽減されることは、間違いないと思います。

 

そして、結婚している同性カップルが二人で部屋を借りるという変化が社会に浸透してきたなら、

まだ結婚していない同性カップルであっても、

賃貸契約時に二人の関係をオープンにしやすくなるはずです。

 

台湾に住む国際同性カップルが増える。

高雄同志大遊行(高雄レインボープライド)2016の巨大レインボーフラッグ

アジアには未だ同性婚を合法化した国は存在していないのですが、

台湾がまもなく先陣を切ってそのリストに加わることになります。

 

これは、アジアに生きるLGBTにとっては、とてつもないインパクトを持った出来事。

 

まだまだ理解が進んでおらず、時には命すら脅かされる社会が形成されている国も多いなか、

台湾はまさにアジアの希望の星となるわけです。

 

そうなると、よりフレンドリーな環境が整った場所を目指したくなるのは、自然な流れ。

 

LGBTコミュニティの間では、

国境を越えての交流がより活発になることが予想されます。

 

それに伴って、台湾人のパートナーを持つ国際カップルも増えてくるはずですが、

これまでは二人の国籍が違う故の大きな問題がありました。

 

それは、「ビザ」のこと。

 

二人の信頼関係が十分に築かれてくると、

国際異性カップルであれば「結婚」をして「配偶者ビザ」を申請すれば、

お互いの国に合法的に滞在することが認められます。

 

しかし、同性カップルの場合は「結婚」という選択肢がなかったため、

永遠に「配偶者ビザ」をもらうことは不可能。

 

「学生ビザ」や「就労ビザ」、「投資ビザ」など、

期限的にも金銭的にも条件のあるビザを少しずつ繋ぎとめながら、

「いつ滞在許可が下りなくなるか」という不安の下で生活を続けるほかありませんでした。

 

「ビザ」によって二人の運命が左右される、と言っても過言ではありません。

 

なので、国際恋愛中の同性カップルにとって、

同性婚の合法化は朗報中の朗報!

 

異性カップルと同じく「配偶者ビザ」を申請する権利が得られるようになることで、

二人の「物理的な別れ」を心配をすることなく、共に台湾で生活を送ることが可能になります。

 

「台湾人パートナーと結婚して、台湾で暮らす」というライフスタイルが、

アジアを席巻することも十分にありえますね。

 

「両親」として子供を育てられる。

高雄同志大遊行(高雄レインボープライド)2016のパレードでレインボーフラッグを持って歩く親子

同性婚が認められていない今現在でも、

子供を育てている同性カップルの方は台湾にもおられます。

 

しかし、自分が産んだ、あるいは養子として受け入れたに関わらず、

問題なのはカップルのうちどちらか一方としか子供との法的つながりを持てないこと。

 

もう一方のパートナーは、いくら毎日を一緒に過ごしていたとしても、

法律上では「赤の他人」になってしまうのです。

 

人生を共に歩むパートナーとして二人で子供を育てているという事実は、

結婚のできる異性カップルと何ら相違ないにも関わらず、両者の間に存在している大きな差。

 

婚姻制度によって同性カップルも法的保障が得られるようになれば、

その差は一気に解消され、

正式に「両親」として子供を迎え入れることが可能となります。

 

「どのように産むか」という点は今後討論がなされる必要があるとは思いますが、

養子制度を利用して子供を持つ同性カップルが身近な存在になる

という未来は確実に見えてきました。

 

保育園のお迎えに行ったら、子供と手をつないで家路につく二人のお父さん。

恋人の家に初めて行ったら、二人のお母さんがお出迎え。

 

今、生まれたばかりの赤ちゃんたちが大きくなる頃、

台湾の社会にはきっと、多様な家族のあり方が芽生えているに違いありません。

 

病院でパートナーとして認められる。

彩虹台南遊行(台南LGBTプライド)2015での同性パートナーシップ条例実施を求める署名活動

東京の渋谷区で施行されたのを皮切りに現在、

台湾の多くの都市でも実施されている「同性パートナーシップ条例」

 

法的な保障を得られる制度ではありませんが、パートナーの事故や入院に遭遇した際、

「面会」や「手術同意」の権利を認めてくれるセーフティーネットの役割を果たすものです。

 

しかし、「法的な効力を持たない」という点で、

当事者にとっては非常に心もとない制度であることも事実。

 

婚姻という形で法的に関係を確立しておけば、

仮に病院側のLGBTに関する配慮が足りなかったとしても、如何なる事態であっても、

確実に「パートナー(配偶者)」として決定の権利を有することができる

ようになります。

 

僕も数ヶ月前にボーイフレンドが緊急入院するという事態に遭遇し、

「本当に面会できるのか」「重篤な状態であれば僕に何ができるのか」

という不安を身をもって体験したばかり。

 

普段の生活の中ではあまり意識することのない話題ではありますが、

もしもの時の対策をどう打っておくのか、二人でよくよく話し合っておく必要はあると思います。

 

パートナーの遺したものを相続できる。

高雄同志大遊行(高雄レインボープライド)2016パレードで掲げられたプラカード「愛は差別より強い 結婚しよう!」

パートナーに不幸が起こってしまった時、結婚をしていれば

遺されたパートナーは配偶者として、相続をする権利が認められます。

 

「そんな現金な話…」と思われる方もおられるかもしれませんが、これはとっても大切なお話。

 

現実に台湾では、相続ができなかった故の悲劇のニュースが、

国中を駆け巡ったことも過去にありました。

 

台湾人のパートナーを持つフランス人教授は、二人台湾での共同生活を送ること35年。

 

ある日、台湾人パートナーが病に倒れ、この世を去ってしまいました。

 

しかし、同性婚が認められていない台湾で、フランス人教授は法律上何の関係も持たない「他人」

 

35年もの歳月を、婚姻関係にある異性カップル同様に過ごしてきたにも関わらず、

パートナーの遺したものを自分の力では何一つ相続することができませんでした。

 

人生最良の伴侶を失い、パートナーの生きた証すらも失い、失意のどん底に沈む彼。

 

「10階から身を投げた人物がいる」との通報を受け駆けつけた警察官が見たものは、

この世を去ったパートナーを追いかけていった、フランス人教授の最後の姿でした。

 

もしも、台湾で同性婚が認められていたのなら、このような悲劇は防げたのではないか?

 

事件をきっかけに、同性婚合法化を求める声が一層強くなっていたことも、

今回の「違憲」判決と無関係ではないはずです。

 

アジア初の快挙として注目を集めた、台湾の歴史的決断。

 

しかし、当事者の間では「まだ2年という時間を待たなくてはいけないのか?」と、

手放しでは喜べない意見も一部で飛び交っています。

 

同性婚の合法化を待つ間に、また尊い命が失われてしまう可能性は、

依然として残されているのです。

 

可能な限り早い段階で法整備が完成されることを、僕も願ってやみません。

 

まとめ

彩虹台南遊行(台南LGBTプライド)2015で手をつなぐゲイカップルたち

今日は、同性婚合法化目前の台湾でゲイカップルの未来について

想像してみたことをシェアしました。

 

もしかすると、すでに結婚をされている異性カップルの方からすると

「結婚の良いところしか見ていない!」と思われるのかもしれません。

 

しかし、「結婚する」という権利を与えられていなかった僕らには同時に、

これまでそんな「輝かしい部分」を想像する権利すらも与えられていなかったのです。

 

二人の家を持てる。二人の子供を育てられる。二人の一生を共に過ごすことができる。

 

異性カップルにとっては当たり前に認められていた家庭を持つという「夢」が、

同性カップルにとってもようやく「夢」になり得る時がやってきたのです。

 

当事者の一人として、こんなにうれしいことはありません。

 

「うれしい」という言葉では言い表せないくらいに、感激しています。

 

これから台湾は「多様な社会」に向けて、さらなる進化を遂げていくはずです。

 

僕たちカップルもこれからどんな人生を歩んでいきたいのか、

たくさん、たくさん検討してみたいと思います。

 

おめでとう、そして、ありがとう、台湾!!!

 

▼こちらの記事もよくお読みいただいています!▼

→国際ゲイカップルに同性婚合法化が必要なたった1つの理由。

→台湾人彼氏の父親と僕が初対面した不思議な一日のお話。

→付き合って4年になる僕の台湾人彼氏を紹介します。

→台湾5大LGBTプライドに1年かけて全力参加してみました。

→アジア最高のゲイフレンドリー国・台湾で暮らす6つの方法。

 

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コメント

コメント一覧 (5件)

    • そうですねー!
      これから同性カップルのライフスタイルが大きく変わりそうな予感に満ちていて、
      僕もすごく期待しています!

  • 以前からちょくちょく拝見させて頂いており、台湾生活で役立つ情報を参考にさせて頂いてます。自分も台湾でパートナーと生活をしておりますが、今回の同性婚合法化について両手離しで喜んで良いものか今一つピンときていません。前さんの仰るような世間の流れになってくれればこの上なく嬉しいのですが、こと台湾の政治に関してここ5年程傍観してきた印象では安穏としていられないのでは?といった不安が残ります。

    とは言え、アジアの中では一番エネルギーも忍耐力もある様に思えます。今後の展開を見守りつつ台湾での生活をパートナーと続けて行きたいと思っています。

    これからもブログ拝見させて頂きます。頑張って下さい。

    • 『にじいろ台湾』をご覧いただきありがとうございます!
      そうですね、おっしゃる通り、台湾の「社会を変えていこう!」とか「このままではダメだ!」というパワーと粘り強さは、
      台湾で生活している日本人としてとても興味深い点だと僕も思います。

      もしよろしければ、「同性婚合法化を手放しで喜べない」とお考えの理由をお聞かせいただけますか?

      僕は当事者ですので、もちろんとても嬉しく、これからの人生を(良い方向に)変える
      大きなインパクトを持った出来事として捉えていますが、
      もしかすると当事者だからこそ見えない部分というのもあるかもしれないなと、コメントをいただいて感じています。

      ご参考にさせていただきたく思います。

  • ご返答ありがとうございました。自分の発言「手放しで喜べない」の理由について簡単に述べさせて頂きますね。あくまでも個人的な見解ですので逆に前さんから見て「おいおい、ちょっとそれはおかしくないかい、おっさん?」ってな点があれば、コメント頂戴できれば幸いです。

    さて本題に入ります。数年程前の台湾で全台どこにでも大陸からの観光客が溢れて返っていたのは記憶にも新しいことかと思います。マナーの問題だとか諸々の問題があったものの彼らの落とす銭で潤っていた台湾の方々がいたのも事実。

    同様の事がパレードの行われる10月に台北で起こっています。各国から台北を訪れる同志達が街中に溢れ返り連日連夜の宴が続きます。この中に大陸/香港からの同志達も相当数含まれているのは容易に察しがつきますね?現在の香港の政況下で彼らは台湾を理想の移民先と捉えている層が相当数います。実際台湾で起業され帰化される香港系中国人は年々増加の一途。

    そうです同性婚合法化は、他国からの移民が増加する一面を持ち合わせているわけです。勿論、台湾人と交際を続けた後に同性婚され国際同性婚される方が増えれば台湾社会もそれなりの恩恵を受けることになるかと思いますが、私が懸念しているのは、この制度を利用した非同志の抜け道になる可能性があること。もう何処の国の事を意味しているかは察しがつきますね?今でもピリピリしている政局にとって火に油を注ぎかねない可能性があると私は見ているわけです。

    抑圧された彼の地での同志/非同志達が波の様に移民となって来台したとしたら中々の混乱ぶりが予想されるのでは?と思っているわけです。当然この法案もザルではないでしょうから台湾もしっかりと対策を採ることと思います。

    こんなネガティブには考えたくないのが本音ですが、台湾の歴史と現在の政局を見る限りあり得ない話じゃなさそうに思えてなりません。他にも諸々の懸念材料はありますが、ここでの記述は誤解を生み兼ねないのでここまでとさせて頂きます。

    上記が私の「手放しで喜べない」主な理由になります。誤解のないように明言しますが、個人的には合法化は賛成です。合法化するなら想定される事態の対策も考慮してね、同志の有権者を政治利用する餌にしないでねという台湾政府への願いも込めています。

    前さんのカウンターコメントを頂ければ幸いです。

    長々とすみませんでした。

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